デジタル×センサリーでDMの送付効果を高める
――ここまで、コロナ禍でのマーケティングについてお話を聞いてきました。視点を活かしてコミュニケーションのシナリオを設計するときのポイントを教えてください。
恩藏:印象深い事例があります。2019年、「第33回全日本DM大賞」のグランプリに選出された、ディノス・セシールさんのパーソナライズDMの取り組みです。
2種類の施策があって、1つ目の「カート落ちDM」は、顧客が欲しいと思っているタイミングを逃さずに、パーソナライズされた情報を届けるというものです。具体的には、ECで商品をカートに入れたのに購入せず離脱した顧客に向け、最短24時間でその商品を含め3点の案内が送付されます。
2つ目の施策では、AIを活用して、顧客が購入した商品に似たアイテムを着ている写真をInstagramの一般投稿から抽出して、その着こなしアイテムに近しいものを提案します。
両施策とも、まさにデジタル×アナログが統合された内容になっており、コンバージョンとレスポンス率を向上させていました。今後のDMの方向性としても、デジタルを活かしながら、今回お話したようなセンサリーの知見を上手く取り入れられるといいのではないでしょうか。
いろいろな手段が考えられるので、それらをいかに上手く組み合わせ、使いこなせるかが大事になってくるのかもしれませんね。
――最後に、これまでに恩藏先生は日本郵便の「デジタル×アナログ振興プロジェクト」を率いてこられ、様々な事例や成果を出されてきました。そうした事例をセンサリーマーケティングの視点で読み解くポイント、活かしていくためのアドバイスがあれば教えてください。
恩藏:プロジェクトでは、約4年間にわたって、DMとデジタルとの組み合わせによる効果を探る実証実験を行ってきました。
そこでは、DMとEメールを送付する順序によって効果や受け取る側の感情が変わる“順序効果”の話など、さまざまな学びがありました。どの結果も、普遍化して使える部分が多い内容だと思います。
これまで蓄積してきた事例をマーケターが読み解くときは、インプリケーション、つまり、その結果をどう実務に生かせるかという視点を意識していただきたい。どうしてその結果になるのか、そのメカニズムや背景を深く理解することが自社のビジネスに応用できることにつながるのではないでしょうか。
日本郵便のデジタル×アナログ振興プロジェクトとは?
デジタル、データによりコミュニケーション、マーケティングの環境が大きく変わる中、アナログだからこそできること、DMだから伝わることとは何か。デジタルとアナログの組み合わせにより、より心に響くコミュニケーションを実現できるのではないか。日本郵便ではこのような問いをもち、2016年よりデジタル×アナログ振興プロジェクトとして、実証実験、産学連携、その結果を広くお伝えするPR活動を続けています。