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恩藏教授に聞くコロナ禍でのマーケティング “対面”を補う手段をどう確保するか

コトラー教授の入門書にも「押し付けない」コミュニケーションの事例が

――恩藏先生はフィリップ・コトラー教授著作の翻訳プロジェクトを監修されていますが、近年のコトラー教授の研究の方向性と、このセンサリーマーケティングに関連性はあるのでしょうか。

恩藏:私が翻訳を担当していて、定期的に新しい版が出るコトラーのマーケティング入門書があります。その一番新しい版を読んでいると、理論やフレームワークはあまり変わらないものの、マーケティングの世界観が大きく変化している印象を受けます。というのも、本の中では、押し付けないコミュニケーションを意識した事例がいくつも掲載されているからです。

――押し付けないコミュニケーションを意識した事例について、詳しく教えてください。

恩藏:たとえば、米国では最近、広告会社的発想と映画会社的発想を融合させる取り組みが一般的になっています。ニューヨークのマディソン・アベニューは、大手広告会社が集まっていることで知られています。一方、映画会社が集まるハリウッド・アベニューにはヴァイン・ストリートが交差していることから、広告とエンターテインメントとの融合を「マディソン&ヴァイン」と呼んでいるのです。

 広告とエンターテインメントの融合には、「アドバーテインメント」と「ブランデッド・エンターテインメント」という2通りの形態があります。アドバーテインメントの狙いは、広告そのものを娯楽性のあるものにするか、有益なものとすることによって、人々にその広告を見たいと思わせることです。たとえば、毎年、膨大な視聴者がスーパーボウルに釘付けになりますが、試合の観戦と同じくらい、そこで放送される娯楽的な広告にも見入っています。

 また、広告というよりは短編映画や番組のような形態のコンテンツも作られるようになっています。ブランドのメッセージを伝えるプラットフォームは、ウェビソード、ブログ、オンラインの長尺動画、ソーシャルメディアの投稿など多様化しており、「広告」と「消費者によるコンテンツ」との間の境目が薄れてきているのです。

 もう一つのブランデッド・エンターテインメントとは、ブランドを他のエンターテインメントやコンテンツに組み込み、一体化させることを意味しています。最もよく見られるのはプロダクト・プレイスメントで、ブランドを小道具としてテレビ番組や映画に組み込むのです。アメリカのドラマでは、登場人物がスターバックスのコーヒーを飲んでいたり、ジミー・ディーンのソーセージが登場したり、登場人物がチーズケーキ・ファクトリーで働いていたりします。

非対面推奨の環境で、センサリーの知見を活かすには?

――単に情報を押し付けただけでは、購買に進んでもらうことは難しい。その傾向はコロナ禍でますます強まっているのだと思います。一方で、コロナ禍では非対面のアプローチが推奨されていますよね。このような中、センサリーマーケティングの知見を実務に活かすには、どのようなアプローチがあるとお考えですか。

恩藏:対面コミュニケーションを補う手段の一つとして、紙のダイレクトメール(以下、DM)の持つ力を活かすと良いと思います。実際に、対面営業や店舗でのコミュニケーションが難しくなってしまった企業を中心に、DMを再評価する動きが見られています。私は2016年からDMをテーマとした産学連携の実証実験を監修してきましたが、さまざまなセンサリーの知見を活かせることが明らかになってきています。

 たとえば、素材を変えることで触覚に刺激を与えることができるでしょうし、香りや音をつけることも可能でしょう。色というのも大きなポイントで、色によって人々の購買行動に影響を与えられることが実験でわかっています。これはコロナ禍の影響で利用が増加しているECを運用する際にも活かせる知識で、商品を掲載している背景の色、購入ボタンの色を変えるだけでも違いが出てくるはずです。

 あるリゾートホテルでは、宿泊から2週間後に送るサンキューレターにそのホテルの香りを付け、楽しかった思い出を思い起こさせる取り組みをしています。

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デジタル×センサリーでDMの送付効果を高める

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この記事の著者

畑中 杏樹(ハタナカ アズキ)

フリーランスライター。広告・マーケティング系出版社の雑誌編集を経てフリーランスに。デジタルマーケティング、広告宣伝、SP分野を中心にWebや雑誌で執筆中。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2021/05/17 11:37 https://markezine.jp/article/detail/35635

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