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リテールのマーケティングトレンド

イオンの新ネットスーパー「Green Beans」に学ぶ、顧客基盤ゼロからのリテールメディア立ち上げ

 2023年7月、イオンのグループ傘下であるイオンネクストは、新たなネットスーパー「Green Beans(グリーンビーンズ)」を開業。同時にリテールメディア事業にも着手し、サービスを急激に拡大している。本記事では、後発であるGreen Beansの差別化戦略や、顧客基盤がゼロの状態からリテールメディアの早期展開と成長を実現できた要因を同社でメディアビジネス推進 担当部長を務める藤田泰寛氏にうかがった。

イオンのデジタル戦略の中核を担う「Green Beans」

――まずは、2023年7月に立ち上げた「Green Beans(グリーンビーンズ)」の概要をお聞かせください。

 イオンでは現在、「リアルとデジタルの融合」を通じてCX価値の向上を目指しています。中期計画においても「デジタルシフトの加速と進化」を掲げ、オンラインでのグローサリーサービスを重要な柱の一つとしています。

イオンネクスト株式会社 メディアビジネス推進 担当部長 藤田 泰寛氏

 そんな中、イギリスのネットスーパー大手の「Ocado(オカド)社」のソリューション支援を受けてイオンの新たなネットスーパーとしてGreen Beansを開設しました。AIとロボティクス技術を使った注文管理システムと物流ネットワークを構築し、注文から宅配まで自社内で一気通貫して提供しているのが特長です。

 当サービス立ち上げの背景としては、首都圏ではイオンの大型の店舗が多くはないことに加えて、コロナ禍がきっかけで、多くの方が日常的にECを活用するようになり、共働き世帯、子育て世帯が抱えていた「買い物の時間がなかなか取れない」という課題が顕在化したことが挙げられます。

 当社が持つ強みと市場のニーズの双方にマッチする業態を検討した結果、メインターゲット層を首都圏在住の20~40代の子育て・共働き世帯に設定したネットスーパーとしてGreen Beansが生まれました。先述したイオンのデジタル戦略においても中核を担う存在となっています。

発想の転換で“鮮度の良さ”をアピール

――元々、顧客基盤がない状態から新たなサービスを開始されたわけですが、サービス利用者を拡大するために、具体的にどのような戦略を実行したのでしょうか?

 認知拡大に向けてオンライン、オフラインの両方で様々な施策を行いました。2023年10月にはテレビCMも実施しています。

 後発で参入した私たちが単に「新しいネットスーパー」を押し出しただけでは、認知の獲得など当然見込めません。そこで他社との差別化として、二つの施策に注力しました。

 一つ目が「鮮度+」という、“野菜の鮮度を一週間保証する”商品です。ネットスーパーの多くでは、「翌日までに配送する」などの“配送の速さ”をアピールしているところや、生鮮食品以外の商品を売り出しているところがほとんどでした。そのため当社では、「ネットスーパーだからこそ、鮮度が良い」という新たなイメージを創出し、差別化を図ることに成功しました。

 二つ目は、「デリバリークルーの教育」です。当事業において配送はお客様との唯一のリアルな接点です。そのため、デリバリークルーの接客技術の教育は特に注力しました。そのおかげで、利用者から「接客がとても良かった」というお声をいただくことも非常に多いですね。配送を含む体験を自社で一貫して構築し、その顧客体験向上を追求できることは、他社にはないグリーンビーンズの強みだと思います。

 これらの差別化戦略により、当社からのプロモーションだけではなく、利用者の中でも口コミでサービス認知が拡大し、利用者が増加していきました。

 また、当社の配送トラックは非常に目立つ配色をしており、特徴的です。これが町中を走り回ることも一種の宣伝効果となっていたと思います。

Green Beansのブランドカラーを全面にあしらった配送車両

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この記事の著者

三ツ石 健太郎(ミツイシ ケンタロウ)

早稲田大学政治経済学部を2000年に卒業。印刷会社の営業、世界一周の放浪、編集プロダクション勤務などを経て、2015年よりフリーランスのライターに。マーケティング・広告・宣伝・販促の専門誌を中心に数多くの執筆をおこなう。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2024/07/17 07:30 https://markezine.jp/article/detail/45890

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