SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

おすすめのイベント

おすすめの講座

おすすめのウェビナー

マーケティングは“経営ごと” に。業界キーパーソンへの独自取材、注目テーマやトレンドを解説する特集など、オリジナルの最新マーケティング情報を毎月お届け。

『MarkeZine』(雑誌)

第107号(2024年11月号)
特集「進むAI活用、その影響とは?」

MarkeZineプレミアム for チーム/チーム プラス 加入の方は、誌面がウェブでも読めます

業界キーパーソンと探る注目キーワード大研究

宇多田ヒカルはなぜ今の若者からも支持を集めるのか?時代に合わせた顧客コミュニケーションの手法に迫る


 2024年でデビューから25周年を迎える宇多田ヒカル氏は、若者世代や海外の人々から新規のファンを多く獲得し、改めて注目を集めている。本記事では、iU大学教授の江端氏が、宇多田氏の楽曲のプロモーションを25年間支えてきたソニー・ミュージックレーベルズの梶氏にインタビューを実施。音楽市場におけるプロモーション戦略の変遷や、アーティストの魅力を引き出し続ける秘訣をうかがった

宇多田ヒカルの楽曲の宣伝を25年間担当

江端:梶さんは宇多田ヒカルさんのデビュー当初から一貫して宣伝を担当されています。まずは梶さんのこれまでのキャリアについてお聞かせください。

江端浩人事務所 代表 江端 浩人氏
日本企業や外資系のマーケティングや事業責任者を歴任 現在はiU大学教授、MGCのシニアマーケター、AlMONDOの顧問なども兼任

梶:私が26歳で新卒3年目くらいの時に宇多田が15歳でデビュー。その時から宣伝担当を任されました。当時、プロモーションの手法などは何も知らなかったので、CDを大量に抱えて日本全国のラジオ局・クラブを駆け回ったのを覚えています。宇多田のプロモーションは25年担当し続け、その間に日本コカ・コーラとAIの楽曲「ハピネス」のタイアップにも携わりました。今は宇多田ヒカルといきものがかりを担当しています。

株式会社ソニー・ミュージックレーベルズ 第3レーベルグループ ゼネラルマネージャー 兼 EPICレコードジャパン 第三制作部 部長 梶 望氏

江端:ずっと同じ方が担当するのはめずらしいのでは?

梶:そうですね。宇多田のチームの場合、プロデューサーの三宅彰さん、ディレクターの沖田英宣さんも含め、「Automatic」の頃から変わらず一緒に歩んできました。

 そもそも宇多田は、自己プロデュース能力が非常に高く、自分がすべきことを客観的に見ることができるアーティストです。情報発信やファンとのコミュニケーションにも自ら積極的に取り組んでくれています。私たちは「本人がすべきと思うこと」を実現できる環境づくりにフォーカスしています。

江端:アーティスト起点なんですね。

梶:ですね。ただ、すべて本人の意向で進めれば良いわけではなく、必要なリスクマネジメントもしっかりとします。「これをやると、こうなる可能性もあります」と説明をし、宇多田も含めたディスカッションができるチームなのでここまで続けてこられたかなと思います。

デジタルならではの“共感が共感を呼ぶプロモーション”

江端:宇多田さんがデビューした当時の音楽業界では、フィジカルな媒体での流通やオフラインのプロモーションが主流だったと思います。現在ではデジタルにシフトしているのでしょうか。

梶:宇多田はポジションが確立されている上にファン層も幅広いアーティストなので、オンラインもオフラインも活用した「全方位型」のプロモーションを行っています。

 ただ、音楽市場全体でいえば、まだ完全にデジタル配信にシフトはしていないものの、サブスクサービスの登場などにともないCDなどのフィジカルの比率は大幅に減少しています。CDの取り扱い自体を終了する店も増えてきましたし、販売チャネルも実店舗よりECが大きく伸長している状況です。

 また、以前は私も含めて多くの業界関係者は「デジタルだけで音楽は売れない」と思っていました。しかし、コロナ禍を通じて、デジタルだけでヒットする曲が数多く登場するようになりこの考えは大きく変化しました。

 当社の例でいうと、wacciの「別の人の彼女になったよ」は、発売後数ヵ月経ってから、YouTubeのMVに寄せられた一人の感動的なコメントをきっかけにデジタルで大ヒット。現在では、2億回再生されています。決して狙ったわけではなく、楽曲の質の高さとそれに共感した一人のユーザーの強いコメントがさらに多くの人の共感を呼び、ヒットに結びつきました。このヒットはデジタルならではのものですね。

 このできごとをきっかけに、「これからはデジタルだけで売れる時代だ」と考えるようになりました。ファンのエンゲージメントをデジタル上でつくり、それが徐々に広がって数ヵ月後に拡散につながるといったプロモーションが主流になっていくのだと思っています。

会員登録無料すると、続きをお読みいただけます

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

次のページ
ストリーミングサービスの登場で変わった再生回数の増やし方

この記事は参考になりましたか?

  • Facebook
  • X
  • Pocket
  • note
関連リンク
業界キーパーソンと探る注目キーワード大研究連載記事一覧

もっと読む

この記事の著者

江端 浩人(エバタ ヒロト)

iU大学教授、江端浩人事務所 代表、MAIDX LLC代表、AlMONDO事業顧問

米ニューヨーク・マンハッタン生まれ。米スタンフォード大学経営大学院修了、経営学修士(MBA)取得。伊藤忠商事の宇宙・情報部門、ITベンチャーの創業を経て、日本コカ・コーラでマーケティングバイスプレジデント、日本マイクロソフト業務...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

岡田 果子(オカダ カコ)

IT系編集者、ライター。趣味・実用書の編集を経てWebメディアへ。その後キャリアインタビューなどのライティング業務を開始。執筆可能ジャンルは、開発手法・組織、プロダクト作り、教育ICT、その他ビジネス。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

MarkeZine(マーケジン)
2024/07/01 10:08 https://markezine.jp/article/detail/45790

Special Contents

PR

Job Board

PR

おすすめ

イベント

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング