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味の素冷凍食品「冷凍餃子#手間抜き論争」サイボウズ「がんばるな、ニッポン。」話題を呼んだPRの裏側

社内からは反対も。それでも公開に踏み切った背景は

 こうして、マスプロモーションを起点に話題となった「がんばるな、ニッポン。」だが、社内では強烈な反対もあったと大槻氏は振り返る。

 「テレビCMが公開される直前まで、社内は大炎上でした。『気持ちが悪い』という率直な声からロジカルな批判まで、様々な声がありました」(大槻氏)

 それでも実施を決めた背景について、大槻氏は次のように説明する。

 「サイボウズの意思決定は『誰が決めるか』が明確に決まっています。営業本部だったら営業本部長、人事だったら人事本部長が、やるかやらないかを決めるというものです。

 もちろん他の部門から意見も募りますが、それはあくまでも助言。だからこそ『やりたい、やるべきだ』と思った時には進めることができますし、結果的に失敗してしまったときも、責任の所在が曖昧になることはありません」(大槻氏)

 今回の広告については、当時の日本にとって大事なメッセージであり、サイボウズがブランドとして目指す姿にも沿うと判断。社長やマーティング本部長からも支持を得ていたこと、たとえ表現に批判が出ても、その意図を公明正大に説明できることから、実施に至ったという。

 一連のプロモーションは、数年間横ばいだった企業認知度を大きく押し上げ、特に採用などで効果を実感できている。2021年は新たに「だれでも取締役」という制度について新聞広告を出稿し、オウンドメディア「サイボウズ式」を通じて、コーポレートガバナンスの切り口で問題提起と発信を行っているそうだ。

PRパーソン/SNS担当者の質問に回答

 両社の事例の発表後には、パネルディスカッションが行われた。広報/PR担当者、SNS担当者を中心に様々な質問や悩み相談が寄せられ、“中の人”氏と大槻氏が回答した。

1. 「売上につながるの?」と言われたらどう答えますか?

【大槻氏による回答】

 「売上にはつながりません」と言っています。無理につなげようとすると議論がブレてしまいます。「(売上ではなく)意図した認知を作るのが私たちの仕事です」という説明の仕方をしています。

 知らない会社から、買うという行為は生まれないため、まずは知っていただくことが重要です。でも、単に知られている状態を作るのではなく、会社としてどのような社会課題に立ち向かっているのか、文脈に沿って発信していくことで、多くの興味を得られると思います。

 「サイボウズは何のために日本でグループウェアを販売してるのか、それがクリアにならないと、製品を買ってみようっていうステップには進まない。売上は後から付いてくる。まずはパーパス(企業の存在目的)認知なんです」と割り切っていただくように説明しています。

大槻氏が説明したコーポレートブランディングのミッション。“ストーリーがあり、差別化された”という点が重視されている
大槻氏が説明したコーポレートブランディングのミッション。
“ストーリーがあり、差別化された”という点が重視されている

【“中の人”氏による回答】

 PRってどこまで行っても不確実なものです。お客様の共感を生まないと購買につながりませんが、相手のあることですので、「絶対に共感してもらいます」と言い切ることはできません。そのため「(売上に)つながるように頑張ります」という形でいつも答えています。

 ちなみに味の素冷凍食品では、PRの後に広告をどう組み合わせてブランディング・購買につなげるか、という設計を丁寧に行うようにしています。PRだけに売り上げ目標を負わせないようにすることが必要ではないでしょうか。

2. KPIはどのように設計していますか?

【大槻氏による回答】

 反響数や認知度など数値として確認できるものは、すべて確認するという状況は作っておくようにしています。しかし、それ自体を目標とはしていません。KPIよりも大事にしているのは、SNSでのコメントです。私たちが投げかけたメッセージに対してどんな反応が返ってきているか、その中に次のヒントがあったりするので、そこを見ています。サイボウズは多くの社員がSNSが好きな社風でもありますので、この取り組みはブランディングに限らず全社的に行っています。

【“中の人”氏による回答】

 意識変容や態度変容で測るようにしています。それらをゴールにした時の指標は具体的に何がいいのかというのは、施策によって分かれています。今回の「#手間抜き論争」については、手間抜きという言葉がこれまで使われてこなかったものでした。そのため今回は、手間抜きという言葉が生活者の皆さんから出てくるようになったことが1つの意識変容だと考え、Twitter上での言及数のチェックなどを行うようにしています。

3. 炎上は怖くないですか? 対策・対応はどうしていますか?

【大槻氏による回答】

 単に「炎上」と捉えるだけでは、解像度が粗いかもしれません。話題になっている状態を、炎上とおっしゃっている方も多いと感じます。

 本当にまずいのは、発信する企業側にミスが起きているもの、姿勢としておかしいもの。そうしたものは誠実に謝罪すべきだと思いますが、基本的には炎上というのは「話題になっている」と捉えたほうが良いのではないでしょうか。

 サイボウズでは炎上を恐れて発信を控えるよりも、まずは自分たちのスタンスを表明します。反響をみて、間違っていたら変えれば良いのです。とはいえ、社内に反対するメンバーが多いと施策の実施そのものが難しくなります。社内にできるだけスタンスを知ってもらってから発信を始める、意識合わせをしてからスタートすることが大切です。

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この記事の著者

臼杵 優(ウスキ ユウ)

ビジネスやWebマーケティング、テクノロジーなど様々なWebメディアでの編集・執筆を経験。また、メディアでの執筆と並行し、企業の導入事例インタビューやオウンドメディア支援や運用を行っている。マーケティング業務に従事できる編集者として活動している。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2021/04/19 09:00 https://markezine.jp/article/detail/35683

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