ファーストパーティデータに強みを持つ楽天
楽天の2020年度第3四半期決算によると、連結での売上収益は3,614億円(前年同期比13.2%増)。このうち国内ECの売上収益は1,492億円で、フィンテックが1,440億円で続いている。
サードパーティCookieが規制されることによって広告事業者は対策を迫られているが、楽天には全世界に14億人規模の会員がおり、会員IDには決済や住所に関する情報がともなっている。量と質、属性の正確性、フィンテックデータとの連携、購買データが紐付いた質の高いファーストパーティデータが、脱Cookie時代における楽天の強みだ(図表3)。
楽天が2020年2月に行った2019年度通期決算の広告売上は1,123億円(前年同期比16.7%増)となり、はじめて1,000億円を超えた。2020年度第3四半期の広告売上は310億円(同12.0%増)で、この背景にあるのがEC事業の好調と楽天の持つ会員IDに紐付く膨大なデータである。
さらに9月にはオフラインのマーケティングソリューション「RMP-Omni Commerce」の新メニュー「アドホックオフライン購買分析」が発表された。このメニューを利用することで、企業はユーザーがレシート画像を送付するとポイントを獲得できる「Rakuten Pasha」で蓄積されたデータを用い、実店舗でのマーケティング施策を最適化できる。
電通・博報堂・サイバーエージェントによる提携・M&A
最後に国内広告会社の動向として、電通・博報堂・サイバーエージェントによる提携・M&Aを紹介する。
電通グループでは、2020年初頭にデータアナリティクス・コンサルティングのE-Nor、B2B領域のマーケティングオートメーションサービスのDigital Pi、ファーストパーティデータマーケティングの4Cite MarketingやMedia Stormなど海外企業を買収し、各ブランドの事業の強化を進めた。国内でも8月にドコモなど複数社と広告の接触から商品購買までの効果測定がID単位でできる「docomo data square」を提供している。
博報堂は2020年4月に台湾大手広告エージェンシーグループ・Growww Mediaを連結子会社化。国内では博報堂DYメディアパートナーズがGunosyとの協業プロジェクトを発表し、テレビCMによる獲得成果最適化を実現するプラットフォーム「Guhack」をリリースした。
2020年9月にはサイバーエージェントが伊藤忠商事、ファミリーマート、ドコモと小売事業者の購買データを活用した広告代理店業を行う新会社「データ・ワン」の設立に合意。この新会社では、ファミリーマートなどが保有する購買データ、ドコモが保有する会員データを活用。オフラインデータとオンラインデータを統合してID単位でのターゲティング広告配信から商品購買までの効果検証が可能な広告商品を開発・販売する。
また、上記3社は企業のマーケティングとマネジメントを支援するM-Forceとの協業や業務提供を発表している。同社はP&Gでキャリアを積んだ西口一希氏と彌野泰弘氏によって設立。マーケティングを経営視点で捉えて事業の成長をサポートするアプローチは従来の支援会社とは異なるため、今後の動向に注目したい。
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