SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

新着記事一覧を見る

MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

直近開催のイベントはこちら!

MarkeZine Day 2025 Retail

米国最新事情レポート『BICP MAD MAN Report』

WalmartとAmazonの示唆 米国のD2C(DNVB)は第三フェーズへ

DNVB育成よりも生鮮食品宅配のパイプづくり

 旧来のWalmartの思考では判断できなかったこととして、マーク・ローリ氏の采配でWalmartは2020年9月、「Amazon Prime」に対抗した「Walmart+」を発表している。食料品の当日配達と、一般商品の翌々日配達をAmazonより安い年間98ドルのサブスクにて口座を広げる方法だ。ところがWalmart全体に貢献した利益に注目してみると、実業店舗事業では約7,000億円の黒字利益を作っているのに対して、EC事業は約2,000億円の赤字(未公開の推定)を垂れ流す状況だったようだ。

 Walmartの戦略転換から、ブランド獲得よりも、足元の「ECフルフィルメント施設」へ強固に投資する意思が読み取れる。WalmartやAmazon等の流通企業が、儲けが出ないとわかっていても「生鮮食品狂想曲」に参入するのは、冷蔵しても日持ちしない生鮮品を「毎日お届けできるパイプ」を構築し、まずはみなさんに不便なく使ってもらうことで、数年先の長期LTVにつながると気づいたからこそ。

 日本にも多くのアイデアがあり、たとえば「クール宅配便」は、Amazonも驚くLTV構築のフックを築くビジネスモデルの材料だったはずだ。他にも日本の駅ビルに入居するスーパーやモールも、一等地を活用した近隣への生鮮品のお届けなどは可能で、「宅配の向こう側」の価値創出が在り得る。

 Walmartより一歩抜きん出るAmazonは、単なる宅配のスケール化の薄利を求めていない。Amazonが高利益率事業である「PillPack(医師処方箋薬の宅配)」を買収したのが2018年で、Walmartが類似事業に投資を始めたのが2020年の「CareZone」買収で、ここに2年の時差が見える。今後は利益の差にも注目しておきたい。

この記事は参考になりましたか?

  • Facebook
  • X
  • Pocket
  • note
関連リンク
米国最新事情レポート『BICP MAD MAN Report』連載記事一覧

もっと読む

この記事の著者

榮枝 洋文(サカエダ ヒロフミ)

株式会社ベストインクラスプロデューサーズ(BICP)/ニューヨークオフィス代表
英WPPグループ傘下にて日本の広告会社の中国・香港、そして米国法人CFO兼副社長の後、株式会社デジタルインテリジェンス取締役を経て現職。海外経営マネジメントをベースにしたコンサルテーションを行う。日本広告業協会(JAAA)会報誌コラムニスト。著書に『広告ビジネス次の10年』(翔泳社)。ニューヨーク最新動向を解説する『MAD MAN Report』を発刊。米国コロンビア大学経営大学院(MBA)修了。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

MarkeZine(マーケジン)
2021/03/29 07:30 https://markezine.jp/article/detail/35802

Special Contents

PR

Job Board

PR

おすすめ

イベント

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング