複雑化するユーザー行動、CDPによるカスタマー理解が鍵に
4つ目の海外動向は技術について。オンラインとオフラインを行き来させるO2Oや、顧客接点を増やすオムニチャネル、オンラインとオフラインを一体のジャーニーとして捉えるOMOなど、これまでジャーニーマップの考え方は進化してきた。複雑化するカスタマージャーニーを一元管理するために必要なのが「CDP(Customer Data Platform)」だ。ビジネスを海外に展開するとなれば、各国のカスタマーの行動を正しく分析し、理解して次の施策につなげなければならない。そのためには「一刻も早いCDPの導入を」と小林氏は強調した。
ハイパーオートメーションも注目すべき技術動向の1つだ。ガートナーの担当者によると、「企業が抱えるビジネスプロセスの多くが自動化に向かいつつある」という。今は購買プロセスやカスタマーサービスなど、あらゆるものの自動化を意味するハイパーオートメーションが不可逆な時代に突入している。
マーケティングはハイパーオートメーションにいち早く着手してきた領域だと言える。それまで手作業で最適化していたターゲティングやリード獲得を自動化することによって費用対効果を向上し、マーケティング担当者は浮いた時間を付加価値の創造に充てられるようになった。
機械翻訳は適材適所、API連携で海外対応可能なシステム作りを
技術動向の目玉とも言えるAI活用について、小林氏は機械翻訳の観点から解説を行った。機械翻訳はスピード、コスト、対応言語の数において大きなメリットを生み、定型的な文章や主語と述語がある文章の翻訳を得意とする一方、略語や固有名詞を含んだ文章の翻訳や、行間を読み取る翻訳においては人力に軍配が上がる。
「機械翻訳の課題は翻訳品質にあります。95%の精度まで高まってきたというデータは出ていますが、それでも1,000語につき50ヵ所の誤訳が発生する計算になります。完璧主義の傾向が強い日本企業の多くは、50ヵ所の誤訳を恐れて機械翻訳を一切使わないか、多言語対応自体を諦めてきました。活用のコツは、機械翻訳・人力翻訳・ハイブリッド型のポストエディットをコンテンツに応じて使い分けることです。専門用語を含む文章やクリエイティビティが求められるキャッチコピー、社外向けのコンテンツは人力とポストエディットを組み合わせ、社外向けほど高い精度が求められない社内向けのコンテンツは機械翻訳化すればコストを抑えつつ品質を担保できます」(小林氏)
高額なシステムを導入したり、新しい仕組みを自分たちで1から創造したりする場合は相当な初期投資が必要となるが、APIを使えば各機能に特化した外部のサービスと簡単に連携することが可能となる。日本のECではまだ自前で実装できない海外発送のサービスも、海外ではAPIを介して対応しているところが多い。「マルチ通貨決済や購入代行など、様々な外部サービスと連携することでAPIエコノミーを構築できないか検討すべき」と小林氏は話した。
政治、経済、社会、技術、様々な領域でトレンドは変容し、先進事例が生まれている。情報へ簡単にアクセスできる一方、言語の壁を理由にその情報を3%しか理解できていない人もいるという。講演の最後に小林氏は「2021年は情報の取得と発信について考えてほしい」と語り、講演を締めた。
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