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「withファン」レポート

商品PRゼロなのに「ブランド好意度」急上昇!老舗菓子メーカー・春日井製菓が“スナック”を開店したワケ

春日井製菓の“ファン”の定義は?/質問コーナー

Q1.原さんや春日井製菓では、ファンの定義、またはファンの方にどうなってほしいと考えていますか?

原:広告代理店勤務時代に散々使ったものに下図のような思考フレームがあり、春日井製菓では点線で囲った部分を広くファンと定義しています。下から上に段々と階段を上ってもらうために、いろんな施策を組んでいます。

原:上っていく速度は、一歩ずつだったり、一気に駆け上ったり、お客さんによって様々ですが、その引き上げる力とは、「共感と発見」だと思っています。

 「共感」は重要ですが、それだけだとその場が安心なのでそれ以上の興味には発展しにくい。でもそこに「発見」が加わると、窓が開いて新鮮な空気が入ってくるというか、動きが生まれて、興味はさらに発展していくと思っています。言い換えると「幸せな予定不調和」。そんな会を目指しています。

 企業を愛してくれる人が増えるのは、企業の将来にとって本当に重要なことです。「春日井さんのものなら何でも売りたいよ」なんていう小売のパートナーが増えたら、営業の仕事も楽になるし、よいことだらけじゃないですか。

徳力:そうなると、ファンが勝手に商品を広めていってくれるということになりますね。

 実は、これまで弊社でファンミーティングというと、基本的にピラミッドの上のほうに寄るケースが多いんです。原さんがおっしゃるように、幅広く、ちょっと好きかな? くらいの方を取り込んでいくほうが、もしかすると大切かもしれないですね。

原:お菓子は誰でも食べますし、「このブランドのこの商品しか食べない」っていう人はレアです。気になれば新しいものを買ってみる人が大半なので、リーチは幅広くしたいなと。

 もうひとつは、3代目社長が言っていた「食べ物屋のよろこび」というのがありましてね、自分たちが作った商品を「うまいねこれ!」って笑顔で食べてくれる人を見るのが、やっぱり我々の喜びなんです。

 このイベントがきっかけでうちのお菓子を食べた方が、「うまいな~」「いい人たちだったな~」と思ってくれたら、それは自然と広まるし、SNSなどのデジタルツールがその成果をかけ算にしてくれるんじゃないかなと考えています。

徳力:お話の最初にも、「ワクワクしてもらう」ということをおっしゃっていましたが、その効果も大きいかと思いますね。

Q2.新しいことを始めるときに、プロジェクトメンバーがよしやるぞ、とやる気になる仕掛けのヒントのようなモノはありますか?

徳力:スナックの運営のメンバーにはどうされてますか。

原:コロナの前までのリアルイベントでは、マーケ部や営業や商品開発のチームに手伝ってもらっていました。人それぞれにやる気スイッチは違うので、できるだけその人の興味関心やメリットにフィットするように話すように心掛けています。たとえば営業には「お得意先と一緒に来たら距離がもっと縮まるんじゃない?」とか、出会いを求めている人には「いろんなおもしろい人と会えるよ」とか、工場の人には「うまいうまい言って食べてくれる人に、これ作ってるの俺だよって言ったらモテるよ~」とか(笑)。

 もうひとつは、そのプロジェクトの理想のゴールイメージを妄想新聞みたいに作ってみるのはどうでしょう? このプロジェクトをやることで、こんな記事が世の中に出ます、と未来を見せるんです。その中には、プロジェクトの差別優位点や、プロジェクトメンバーの活躍ぶりがわかる写真入り紹介文などが載っているイメージです。企画書でいろいろ難しいことを書くよりもわかりやすいし、話が早いですからお勧めです。

Q3.リアルプロモーションとデジタルプロモーションを関連させたような例はありますか?

徳力:リアルイベントの形跡をオンラインに残していない方はまだまだ多いですよね。イベントのレポートで残っているとちょっと参加した気分にもなれますし、逆に「次はどうしよう」と思っている人も、判断材料になります。ですから、「スナックかすがい」がnoteにストックしてるのもデジタルとの融合ですよ。記録に残すアーカイブのアイデアは前職での学びですか?

原:それはありますね。広告代理店にいた当時も、たった数日のイベントでこんなにコストがかかるんですか? なんて言われたこともあって。イベントという「点」を、後々まで効果が続く「線」にすることは常に意識しています。

Q4.商品を作る側だからこそ言える商品へのこだわりや奥深さを伝えるように注力していますが、マスでは伝わりにくく、地道かつ効率的な伝え方を試行錯誤しています。

原:スナックかすがいでは、商品へのこだわりなどはほとんど話さないんです。今後徐々にやってもいいかなとは思っていますが、「なんだ、結局宣伝かよ」と思われるのはイヤなので。

徳力:以前お手伝いした案件で、新米ママを応援するコミュニティという、商品の枠から外れたコミュニティ運営で、企業としては気を遣って製品のことは言わなかったのですが、逆に参加者から「いつになったら花王の製品の話をしてくれるんですか」って言われたんです(笑)。そう思われてるかもしれないですよ(笑)。

徳力:ではまとめとして私から最後の質問ですが、これまでリアルでうまくいっていたイベントを、オンライン化することに関して、なんらか取り組み方やヒントをいただければ。

出口:オンラインイベントをやるやらない以前の話なのですが、生活に溶け込んでいる商品ほど、ファン歴が長くなると無意識度が上がって言ってしまう気がします。だから、積極的に企業からコミュニケーションを取って、無意識から意識のあるレベルに引き出してくるほうがいいと思うんです。

 これって、長く当然のように食べてると、意識しなくなったり、クチコミしなくなったりするのと同じだと思います。定期的にファンだって思い出していただくには、何か、印象の強い体験が必要ですよね。

 オンラインについては、まずお金をかけずにトライしてみることも重要で、いきなり絵作りとか完璧な状態をめざすと、時間もお金もかかって、どうやって取り返すんだ、というプロモーション的な話になってしまうので、まずは「お客様の声を聴く」というスタンスがいいと思います。

原:出口さんに同感です。オンラインイベントはパソコンと回線があればできるので、最初から壮大なことは考えず、参加者も2~3人からやってみるなど、小さく産んで大きく育てればよいと思います。オンラインでもオフラインでも変わらない大切なことは、「これを、何のためにやるんだっけ」という共通理解をもつことではないでしょうか。

 スナックかすがいの場合は、「かすがう」楽しさを体験していただくことが最重要な目的です。これが、会社への興味や、商品のおいしさの実感や、社員のワクワクにつながります。別の会社にはまた別の目的があるでしょうが、どんな会社でも、自社が提供している価値、つまり商品やサービスの形を借りた「本当に届けたいもの」は何か、ということを見据えていれば、オンラインでもオフラインでもうまくやっていけると思います。タダで始められるものは、失敗しても費用的なリスクは小さいので、まずはやってみるのがいいと思いますよ。

徳力:本日はいろいろとありがとうございました。

【春日井製菓からお知らせ】
次回の「スナックかすがい」は、2021年4月22日(木)18:30に開店します。ご興味のある方は、ぜひご参加ください。
詳細・お申し込みはこちらから/

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この記事の著者

吉田 朗子(ヨシダ サエコ)

アジャイルメディア・ネットワーク株式会社 マーケティング部

広告代理店とカナダでのワーキングホリデーを経て、2018年アジャイルメディア・ネットワーク(AMN)入社。AMNでは、マーケティング部に所属しながら”寄り添う企業として”をスローガンにしウェビナー、イベントなどを開催中。個人では保護犬のボランティアなどを行いながらより良い未来を模索している。

アンバサダープログラム事業部:https://agilemedia.jp/ambassador-program

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

宮崎 綾子(ミヤザキ アヤコ)

編集者。編集プロダクション勤務を経て2009年に独立、“ひとり編プロ”アマルゴンを運営。PC・スマホ・ウェブ関連の技術&カルチャー書籍編集制作を中心に、PRコンテンツ企画など幅広く関わる。電子書籍の導入期にはImpress QuickBooksシリーズに参画。実績は https://amargon.net

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田口 和裕(タグチ カズヒロ)

タイ在住のフリーライター。ウェブサイト制作会社から2003年に独立。雑誌、書籍、ウェブサイトなどを中心に、ソーシャルメディア、クラウドサービス、スマートフォンなどのコンシューマー向け記事や、企業向けアプリケーションの導入事例といったエンタープライズ系記事など、IT全般を対象に幅広く執筆。著書に『できるfit メルカリ&LINE&Instagram&Facebook&Twitter 基本+活用ワザ』(インプレス・共著)、『ゼロからはじめるテレワーク実践ガイド ツールとアイデアで実現する「どこでも仕事」...

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MarkeZine(マーケジン)
2021/04/02 08:00 https://markezine.jp/article/detail/35817

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