N=1では数字での説得材料にしづらいのでは?/Q&Aコーナー
ここからは、カラナビハートの吉田氏と、アジャイルメディア出口氏も加わり、企業SNSアカウント運用の悩みに答えたパネルディスカッションの様子をお届けします。
【パネリスト】
・スマイルズ 広報 兼 スマイルズ⽣活価値拡充研究所 所⻑ 兼 研究員 花摘百江氏
・カラビナハート 吉田啓介氏
・アジャイルメディア・ネットワーク 出口潤氏
【モデレーター】
・アジャイルメディア・ネットワーク アンバサダー/ブロガー 徳力基彦氏
Q1.N=1を企業SNSで追求するのは難しくない?
徳力:N=1という一人に向けるよりも、より沢山の人に向けて欲しいという意見が出るのは、企業ではありそうです。それから「バズらせる使命感」というのも本当にそうですね(笑)。これは吉田さんにもお聞きしたいです。
吉田:前職のすかいらーくの経験からすれば、Nは大きいほうがいいと思っている会社さんは多いと思います。一人だけにリプライする手間はもったいないよね、とか。エゴサして返事しにいったりしてそれは売上に関係するの? とか。
でもそこは「共感」のポイントですから非常に重要だったりしますので、N=1が大事という今日の花摘さんのお話って社内で戦える武器になるのかなと思いますね。
花摘:いろいろな企業の中の人と話したりすると、やっぱり一人のひとのために話すのが真理な気がする、という話は出ますね。この現在の濁流のようなSNSの流れの中で「あ、これは私に向けられたメッセージだ」と思って受け止める。まず、そう受け止めていただけて初めて、その方の中で「うれしい発信だな、このブランドが好きだな」と思える気がします。そのためには、誰にでもパーフェクトに伝わるようにと考えすぎないほうが、人間らしさとか、血の通ったコミュニケーション、会話という形になっていくのかなと。
Q2.N=1では、数字での説得材料にしづらいのでは?
徳力:今の続きになりますが、N=1運用だとSNSの影響力をまわりや上司に示す説得材料が用意しづらいのではないかと思うのですが。
吉田:効果を示す数字がない段階でSNSの重要性について説得する際ですが、経営者の方々というのは本質をわかっている方がほとんどで、案外SNSの大切さがN=1であるということは、こころに響きやすいのではないかと思います。
ダメな場合ですが、私ならばお客様のいい口コミのツイートをパワポにレイアウトして、見せますね(笑)。これぞ、N=1のデータですから。「A店に食べにいったら、担当だった○○さんがとてもいい対応の人でよかった。また行こう」というようなものを実際に見せると、なるほどこれがSNSの世界か、と感じ方が変わってきますね。
出口:運営を続けるのに数字は必ず必要になりますね。ただ、ある一人の人がブランドのことをめちゃくちゃ好きになっていく過程に真理があると考えて、その変化の様子をウォッチしていくこともひとつのやり方です。そこには一人のファンの真実がありますから、マクロに知っていくことで、目指している売上や来店の促進に繋がることはあると思いますね。それだけでなく、全体の進む方向がうまくいってそうか、というのは「概算力」でもなんでも、数字を使うのがいいと思います。
徳力:花摘さんは、社内での苦労はないですか? 効果を示せ!とか。
花摘:苦労がないわけではないですが、数字だけで表せないというところに理解はあります。ちなみにスープストックトーキョーは、一般の飲食チェーンに比べるとフォロワーは少ないので、一般的に成功しているSNSかというと、そうではないと思われる方もいると思いますし、吉田さんのお話にあったように、そもそもSNSでの取り組みが店舗の売上につながったかも計測しづらいですよね。
そこで、私はECの売上をひとつの糧にしていました。ECは流入がわかりやすいですから、何かの商品についてツイートをしたら、翌日調子はどうですか? と通販チームに直接聞きに行きます。「昨日ツイートしてくれたこの商品がしっかりとお客様に届いているよ」とか「ツイート後の〇時にすぐ売りきれちゃいました。これはツイートがなかったら、これほどわかりやすく売り切れにならないと思いますよ!」と数字もあわせて効果を示してくださるんですよね。
昨年は、コロナ禍の影響を受けて出産祝いに行けない人も多いのでは? というところから着想して、「今すぐ会いに行けないけれど、気持ちをスープと一緒に贈りませんか?」と投稿した結果、とても多くの方にお届けすることができました。
スープストックトーキョーを使ってくださっている方は日頃お忙しい方も多くて、夜遅くEC購入されていたり、仕事帰りの電車のなかで見ていらっしゃるのかな、という方も多かったりするので、そういった感覚を意識してSNSを運用しています。ということで、決してノンKPIではなく、売れるところでは(たとえばテレビに出たとか)しっかり発信して売上に繋げるようにしますし、社内でも「売上=共感」と考えています。