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僕たちのPMFの話をしようか

プロダクト汎用化も組織拡大も今はやらない。5社の満足度を高め切って飛躍したFLUXのPMFストーリー

初期は5社に絞って導入。顧客満足度を徹底的に高める

 「AutoStream」はいわゆるバーティカルSaaSで、ターゲットは中堅~大企業に絞られる。報酬体系はシンプルで、固定フィーに加え、上がった収益に応じて料金を支払ってもらう仕組みだ。そのためPMFの過程で見ていたのは「FLUXに対して報酬を支払うことができるくらい、顧客の売り上げを伸ばすことができるかどうか」だった。

 検証にあたっては、まず5社に絞ってプロダクトを導入してもらい、ひたすら顧客満足度を上げることに注力。ローンチから半年~10ヵ月頃までは、売上は度外視していた。

 また初期の5社は業界大手企業に狙いを定めたという。

 「業界でも有名な5社、大手IT系プラットフォームや大手出版社のWeb経済誌に導入をお願いしました。そこで実績を出せれば、業界の他のプレイヤーも『大手が入れているならば、うちも入れよう』と思ってもらえるので、マーケティング的に有利になると考えたのです。実際にPMFした後は、大手企業で成果が出ましたという営業資料が強力な武器になっています」(永井氏)

 しかし、提供開始当時は思うような収益が出せず、プロダクト面で多くの改善が必要となった。現在は最低でも20~40%アップを収益として提供できているところが、3%台に留まることもあったという。

 「海外で類似の事業を行っている会社から学ぶなどして徐々に改善していったのですが、当時はエンジニアがCTO1名しかいなかったこともあり、大変でしたね。導入してもらうのも継続してもらうのも、泥臭くやっていった部分が大きかったです。」(永井氏)

 ここでも役に立ったのが、永井氏や平田氏が有していた業界におけるネットワークだ。知り合いの担当者に直接お願いし、彼らが決裁できる金額に調整したり、その後も細かくコミュニケーションをとりながら、多少のバグがあったり、すぐに成果が出なかったりしても長い目で見てもらえるよう、信頼関係を構築していった。

プロダクトの汎用性もいったん度外視

 永井氏の説明通り、PMFの段階でエンタープライズ企業に導入してもらうマーケティング上のメリットは大きいが、プロダクトの面では汎用性が低く横展開しにくいカスタマイズを求められることもある。どこまでを反映するか意思決定に苦労している企業も多いが、同社ではどのような方針をもっていたのだろうか。

 「初めの5社に関しては、本来は請け負わないであろうカスタマイズにも対応しました。プロダクトそのものを変えてほしいというフィードバックもあったりしたほどです。ですが当時は、一番の目的は特定の会社の顧客満足度を高めることだと定めて、汎用性についてはあまり考えないようにしていました」(永井氏)

 つまり同社は、PMFが終了するまでは顧客の要望に徹底的で寄り添うことに集中した。ただし永井氏は、同社のプロダクトはオールターゲットではなく業界特化であること、かつ対象顧客が中堅~大企業と限定されていることも、この方針に影響していると付け加えた。

あえて組織拡大もせずにPMFに徹する

 同社は組織体制の面でも、PMFに到達するまでは拡大・定型化を目指さないという方針をとっていた。前述のとおり、PMFに到達したと手ごたえを得たのは2019年の後半から年末にかけてだったが、それまでは創業メンバー4名体制のままで、導入企業を増やすこともしなかった。

 「BtoBかつニッチなプロダクトの場合、購買にあたっては業界内での会社の評判が極めて重要になるため、プロダクトが微妙な状態で拡大を目指すのはネガティブな行為です。誰でも売れる状態になっている、開発や保守管理も再現性がある状態にもっていくまでは、人を増やしてもあまり意味がないと考えていました」(永井氏)

グロースを見据えて行ったのは、再現性を高める“型化”

 ただし同社では、PMF前の早い段階から組織拡大を見据えた準備は進めていた。具体的にはセールスとCSとプロダクトの3つに分けて、再現性を高めるための“型”を作り、今もPDCAを回しながら修正を図っている

 「セールスに関しては、営業資料から収益試算シミュレーションまでを一通り型化しています。CSもお客さんにどのようにコミュニケーションするかを、プロダクトは保守管理エンジニア/CSエンジニア部分を定型化しています」(永井氏)

 同社ではPMF後に組織図を作成し急ピッチで採用を進めてきたが、“型化”ができているため、新しい社員のオンボーディングも早いそうだ。現在はパートタイムの社員も含め約55名に拡大している。

 なお、PMFした後の拡販は、アライアンス・パートナーセールスで進めた。特にアライアンスは施策実施初期から好調だったという。プライシングは、レベニューアップリフトがある程度達成できた段階で調整していった。その際は顧客の反応よりも、自社の営業担当者の「これなら見積書を求められる」という反応を見ながら、適正な価格を探っていた。

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顧客フィードバックを得るための仕組みとNPSの活用

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チームPMF(チームピーエムエフ)

才流 代表取締役 栗原康太氏、DNX Ventures Venture Advisor / EIR 稲田雅彦氏、SPROUND Community Manager/DNX Ventures Investment VP 田中佑馬氏による取材チーム。BtoBスタートアップの手触り感をもった"PMFストーリー"を伝えるべ...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

蓼沼 阿由子(編集部)(タデヌマ アユコ)

東北大学卒業後、テレビ局の報道部にてニュース番組の取材・制作に従事。その後MarkeZine編集部にてWeb・定期誌の記事制作、イベント・講座の企画等を担当。Voicy「耳から学ぶマーケティング」プロジェクト担当。修士(学術)。東京大学大学院学際情報学府修士課程在学中。

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MarkeZine(マーケジン)
2021/05/20 07:00 https://markezine.jp/article/detail/35845

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