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マーケティングの本質を探る

P&GからGoogleに移り、マネジメントスタイルを変えた理由

 アドビの里村氏が、「無意識に入り込んで行動させる」をテーマにマーケティングを語る本連載。今回はテーマから少し離れて、組織・マネジメント論を取り上げる。里村氏はP&G、Google、そしてアドビと渡り歩いてきた経験から「マネジメントスタイルは組織に応じて変えていくもの」との考えに至ったそうだが、それは一体どういうことなのだろうか。

マネジメントスタイルは組織に応じて変えるもの

 今回はテーマから少し離れて、組織・マネジメント論を取り上げたい。ただし、あくまで自分の経験からしか話せないので、筆者が経験してきた外資系消費財・IT企業における組織マネジメントといったほうが正しいだろう。以下に筆者の考えを紹介するが、すべては実績を出すことが大前提であり、その実績を出すためのマネジメントであるということを先にお伝えしておく。

 さて、組織マネジメントとは、ビジョンやゴールを設定し、それに向けた戦略を策定、それを組織に伝え方向性を示すリーダーシップを指す。またその達成に必要な組織内でのリソースを用意したり、メンバーのモチベーション高くキープして仕事をしてもらうためのサポートを行ったりすることなども含まれるだろう。

 実はそのビジョンやゴールの設定にも、本稿で話したブランドによるカテゴリーの再定義が役に立つ。リーダーは組織が気づいてすらいない(未来への)課題を見つけ出し、それをメンバーがワクワクする形で伝えることが必要であり、それこそがビジョンとなる。そしてそれは自社をブランドとした時のカテゴリーの再定義に他ならない。自社のユーザーが何を重視していて、今後何に期待してくれる可能性があるのか、そしてそれは自社の組織をどのように変えることにつながるのか、また組織のメンバーがチャレンジしたいと思えることなのか。それらを考えることができれば、あとはどのように伝えるかということだけになる。

 ただ、ここまで話しておきながら、筆者は組織マネジメントに正解はなく、結果的にはそれぞれの組織に合ったリーダーシップを取らざるを得ないと考えている。つまり、組織を率いる方法やリーダーシップを柔軟に変え、組織のカルチャーに合ったやり方を模索し続けるのが筆者流の組織マネジメントである。特に外資系IT企業を経験した結果、このような柔軟な組織マネジメントの考え方にたどり着いた。多分P&G時代の筆者を知る人がGoogle時代や今の筆者を見たら、まったく違うリーダーシップスタイルをとっていることに驚くのではないかと思う。

組織文化はビジネスモデルに応じて形成される

 この考え方に至ったのは、組織のカルチャーはその組織が依拠するビジネスモデルによって形成されていることに気づいたからである。以前、自分が今までいた会社や組織とは違うビジネスモデルで動いているにも関わらず、前にいた組織のままの組織運営をして文化に合わず、うまくいかなかった経験がある。

 たとえばGoogleは、検索やYouTube動画を見る人が増え続ける限り、売上がある程度自動的に伸びるプラットフォームビジネスを展開している。そのため、デジタル化が自動的に進み、検索する人やYouTube動画を見る人が増え続けている世の中では、ビジネス指標を厳しく見すぎるような組織運営をしても、そもそもそのようなことは求められていないし、組織の和を乱し、協力体制が作れない状況になりかねない。マーケティング組織に関しても、前回取り上げたその会社のマーケティングがどのような定義で運営されているかによって、ビジネス上の指標を厳しく管理する組織運営をするべきか否か、判断が分かれると思う。

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この記事の著者

里村 明洋(サトムラ アキヒロ)

アドビ株式会社マーケティング本部 常務執行役員/シニアディレクター。兵庫県尼崎市出身。慶應義塾大学総合政策学部卒業。新卒でP&Gに入社。営業からマーケティングまでP&Gとしては異色のキャリアを築き、日本とシンガポールにて営業から営業戦略やブランド戦略、コンセプトや広告開発などに従事。Googleに転...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2021/05/17 08:00 https://markezine.jp/article/detail/35848

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