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MarkeZine Day 2025 Retail

マーケティングの本質を探る

P&GからGoogleに移り、マネジメントスタイルを変えた理由

ビジョンやゴールで引っ張るだけではうまくいかない

 柔軟性が大切、などと書くと、組織マネジメントの信念はないのかと思われそうだが、一点だけこだわっていることがある。P&Gではリーダーシップを5Eで定義しており、5EとはEnvisionEngageEnergizeEnableExecuteである。それぞれの詳細はここでは割愛するが、その中でも、個人的にはEngageに重きをおいている。これは、いかに人を巻き込むか、ということである。

 筆者が経験した外資系の企業は、トップダウンである組織は少なく、組織の部署やチームがそれぞれリーダーシップを発揮するケースがほとんどだった。そのため、ビジョンやゴールのみで人を引っ張ろうとしてもなかなかついてこない場合が多く、それぞれがリーダーシップをもって個々人の考え方で動くので、いかに信頼してもらい、人を巻き込むかということがまずは重要だった。中途採用で入る組織の場合は特にそうではないかと思う。

 人を巻き込むには、戦略やロジックに基づいたプランと実績がもちろん必要だが、それだけではなく人はやはり感情で動く。そのため、筆者は飲みニケーションは厭わないし、一見ビジネス上は無駄と思えるかもしれないことにも時間を割き、チームや個々人で問題となっていることを一つひとつ解決するサポートをしていく。

 そうすることで、「あの人が言うなら」とか「あんなことをしてくれた人だから」といった信頼につながり、それは必ず組織マネジメント、ひいてはビジネスにも跳ね返ってくる。また、自分自身(リーダー)が抱えている課題を示すことで、チームメンバーが逆にそれを乗り越えることを助けてくれる、互助型組織ができあがる。これこそが、筆者が理想としている組織のあり方である。

 人を感情から巻き込みつつ、自分で動いて実績も作る。そうして信頼を得た上で、自分の弱みも見せ、助け合える互助型組織を作る。こうすることで、1+1=2以上の結果を出すことができる組織になるのだと筆者は思うし、そのようなありのままの自分でチームをリードするマネジメントこそが、現代のリーダーシップの一つの形ではないかと思う。

チームメンバーが共通の意識を持つために

 チームメンバーに対しては、基本的に自由に仕事をしてもらうことが多い。本音では自分が自由に仕事をしたいこともあるが、外資系で働く人達は自立した人が多く、自分の仕事は自分で見つけて自分で進める、それを許されていると感じられたほうが、結果的にはモチベーション高く仕事をしてくれることが多い。

 ただし、当たり前だが自由には責任がともなう。なので、メンバーには売上や利益、そしてユーザーへの価値とユーザーが能動的に行動に移してもらうことを常に意識してもらうようにしている。ハイレベルでは社会に対する価値も意識させるようにしている。

 社会に対する価値という意味では、メンバーにこちらが設定した課題やビジョンを意識してもらうために、筆者はミーティングなどで、毎回同じメッセージを伝えている。たとえば、自社のプロダクトやサービスが当たり前に使われている世界を作るということをビジュアルやキーメッセージを通して繰り返し伝えたり、アドビでいうと「誰でも自信をもって自己表現できるきっかけを与えてくれるもの」という再定義された価値を毎回伝え、全メンバーに共通のイメージを意識してもらうようにしている。

 本連載でも繰り返しお伝えしているが、ビジネス面では狭義のマーケティングと広義のマーケティング、また、購買サイクルが短いカテゴリーと長いカテゴリーごとに、評価基準をクリアにしておく必要がある。売上や利益といった短期的な指標だけではなく、売上につながる中長期的な指標、たとえば純粋なニーズを測るための能動的な検索行動や、検索行動の中での自社ブランドのシェアを計測するなど、中長期の指標も含めた制度設計・指標の設計が重要になる。詳しくは、第2回で解説したカテゴリーの購買サイクルに関する話を参考にしていただきたい。

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「ナイスチャレンジ!」と称賛し合える状況を作る

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この記事の著者

里村 明洋(サトムラ アキヒロ)

アドビ株式会社マーケティング本部 常務執行役員/シニアディレクター。兵庫県尼崎市出身。慶應義塾大学総合政策学部卒業。新卒でP&Gに入社。営業からマーケティングまでP&Gとしては異色のキャリアを築き、日本とシンガポールにて営業から営業戦略やブランド戦略、コンセプトや広告開発などに従事。Googleに転...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2021/05/17 08:00 https://markezine.jp/article/detail/35848

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