グロースに必要な人材、スキル、組織とは
西井:続いて、グロースを実現するスキルや組織のお話を聞きたいと思います。そもそも、グロースを経験・マネジメントしてきた人材はまだまだ少ない。だからこそ、2人の知見が求められていると思うのですが。
山代:グロースを目指す組織には、大前提として、意思決定のプロセスなどガバナンスに透明性が必要です。メルペイで、過去に巨大なプロモーション予算を投資しましたが、透明性の高いKPIマネジメントがあり、「これくらい投資したらどうなる」がわかっているからできたことなんです。何もわかっていない1円よりも、わかっている10億円のほうが怖くありません。
ですから、グロースを実現する組織には、意思決定のプロセスやKPIマネジメントを可視化する環境を整えることが求められます。また「突っ込む」領域では、非連続的な成長を狙うために、組織全体に負荷がかかります。ここに耐えられる体制を構築するために、どんな人材が必要か、何を意識すればよいかを明確に理解していなければ、グロースの組織は作れないでしょう。
西井:可視化は大事ですね。データが何もないところで「マーケティングお願いします」と言われても、勝てる自信がありません。
樫田:さらにITセクターの場合は、まずプロダクトがしっかりしていないと、マーケティングだけでは伸びません。プロダクト開発の延長線上で、ユースケースをどうやって拡張するかを考えられる体制が求められる。プロダクトとマーケティングの融合が不可欠です。
山代:そうですね。またGrowth Campでは、BtoBのSaaSサービスのグロースを支援していますが、ここでは、営業との連携が勝負です。グロースという一つのミッションに向かって、営業もマーケティングも、さらにプロダクトも一枚岩になって動くことが、ブレークスルーにつながります。

マーケティングとプロダクトの融合が不可欠
西井:では、最後にこれからお二人が実現していきたいことを教えてください。
樫田:Growth Camp創業の想いのひとつとして、数年前に流行していた「グロースハック」という言葉に対するアンチテーゼがあります。詳しくはnoteにまとめているのですが、A/Bテストやアイコンの色を最適化するといったグロースハックの手法は、グロースという大きなの概念の一部でしかありません。料理に例えるなら、グロースハックは特定の調理法、グロースは「料理を作って他人を喜ばせるというスタンスのこと」、というくらい異なります。グロースというのは単なる手法論ではなく、より大きなものの考え方やスタンスの総称だと考えています。
そして、あえて挑戦的な話をすると、精度高く開発されたプロダクトは、「誰の何を解決するか?」が明確で、[WHY/WHEN/WHAT]もちゃんと定まっているもの。プロダクトのグロースの中に、マーケティングも包含されている。マーケティングをどうするか、ではなく、グロースとしてすべてを扱う考え方を提案していきたいと思っています。
山代:ビジョンがあり、優れた技術やプロダクトも持っている企業はたくさんあります。しかし、「どうしたら成長できるか?」というグロースの知見やリソースは圧倒的に不足しています。ここに、Growth Campが関わる価値があると思っています。マラソンで例えると、起業家は、みんな“世界新記録”を出したいし、常に爆速で走りきりたい。そのペースメーカーが自分達の役割です。あと少しのところで足踏みしているサービスの背中を押し、非連続的な成長を描けられるようなパートナーになりたいです。
そして、私もあえて大きなことを言うと、「マーケティングに持ち場が限定されたCMO」は要らないのではないか、と思うことがあります。本来、事業をどう伸ばすかということに向き合わなければいけないのに、分断されていることで、マーケティング単体をどう伸ばすかという話になってしまう。これは、他のCxO職も同じだと思います。
西井:私も、オイシックス・ラ・大地ではCMTとして、マーケティングも営業も見ていますし、結局BSをどう伸ばすかに向き合っている。グロースという概念を各部門で共有することで、そういった越境・連携が行いやすくなり、より速い成長を目指せるだろうと思いました。本日は、ありがとうございました。
