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非連続・再現性ある成長をどう作る?グロースの概念とその実践

分断されたままでは非連続な成長は作れない。マーケティングとプロダクトを束ねる「グロース」の概念とは

 オイシックス・ラ・大地CMTやGROOVE XのCMOも務めるシンクロの西井敏恭氏が、グロースをテーマに業界のキーパーソンたちと対談する本連載。第1回のゲストは、2020年に株式会社Growth Camp(グロースキャンプ)を創業した、元メルカリの樫田光氏と山代真啓氏の2人。Growth Pyramidというフレームワークを考案し、事業のグロース支援を行う両氏に、グロースの定義を聞いた。

マーケティングに閉じていると扱い切れない課題が

※感染対策をしながら取材を行いました。

西井:今回の対談テーマは、「グロース」です。これまで様々な企業に取材し、私自身も複数のビジネスにかかわる中で、マーケティングの範囲だけでは扱い切れない課題が出てきていると感じていました。特に、サブスクリプションやD2Cといったデジタルの特性を活かしたビジネスの成長について考えるには、グロースという語がぴったりではないかと思うようになったんです。そこで、そもそもグロースとはどんな状態なのか、どんなことをどのタイミングで仕掛けるとグロースできるのかを、明らかにしたいと考えています。

 最初のゲストに、まさに「グロース」の言葉を掲げて企業の事業成長を支援している、Growth Campの樫田さんと山代さんをお招きしました。まずは自己紹介からお願いします。

樫田:樫田です。私は大学卒業後、外資系のコンサルティングファームへ入社し、その後データ分析専門の企業を経て、メルカリに転職しました。メルカリでは、データアナリストとして、データ分析チームの立ち上げや各種サービスのグロース戦略に関わりました。

株式会社Growth Camp 樫田光氏
株式会社Growth Camp 樫田光氏

西井:事業についての視点を持ちながら、データ分析のキャリアを歩んできたのですね。続いて山代さんは、P&G歴が長いですよね。

山代:はい。パンパースやパンテーンのブランドマネージャーとして、日本とシンガポールで10年在籍しました。下降しているビジネスのターンアラウンド案件が多かったです。その後、事業ドメインを消費財からモバイル/テック領域に移して勝負したいという想いと、会社のミッションに共感したこともあり、日本発でグローバル市場を狙おうとしているメルカリに入社しました。

株式会社Growth Camp山代真啓氏
株式会社Growth Camp 山代真啓氏

 入社後1年間は、メルカリのGMVに責任を持ち、マーケティング全般をリードしていました。その後、メルペイ事業に参画し、マーケティングだけではなく、組織立ち上げ、採用など幅広い領域に関わりました。このあたりから、自分はマーケティングの専門であるという意識がなくなり、事業をどう成長させるかをあらゆるレバーで考えるようになりましたね。

「見つけて、突っ込む」がグロースの基本

西井:そんな2人がメルカリで出会って、Growth Campを創業されました。Growth Pyramidというフレームワークを発表されていますよね。「ビジネスはLTVで考えるべき」というのを、うまく示した図だなと感じています。

山代:Growth Pyramidでは、価値創出の結果をLTV、価値伝播の必要コストをCACと置きます。LTV>CACとなり、顧客ボリュームが取れるチャネルを発見した先に、グロースがあるという考えです。私たちの場合は、LTV領域は樫田が担当し、CAC領域は私が見ているというのが主な区分けになります。

Growth Pyramid(Growth Camp提供)
Growth Pyramid(Growth Camp提供)

樫田:わかりやすさのためにラフ噛み砕いて説明しますと、グロースとは「ビジネスが大きくなる兆しのユースケースを見つけて、リソースを突っ込むこと」だと考えています。LTVが「見つける」で、CACが「突っ込む」です。このどちらにも、データ分析は大きく関わってきます。

西井:「見つけて、突っ込む」ですか。具体的には、どのように?

樫田:マーケティングのフレームワーク[WHO/WHAT/HOW]は、グロースの場合[WHY/WHEN/WHAT/HOW]に変わると考えています。デモグラ的に「30代女性」などと区切るのではなく、同じ30代女性でも「こういうときに、こんなシチュエーションで」というように細分化する。人々の生活が多様化している現在、デモグラ上は遠くても同じ[WHY]を持っている人をいかに見つけ出すかが大切になります。

西井:確かに。OisixのKit Oisixも「忙しいけれど、家族のために手作りしたい」というインサイトを見つけたことが、売れるきっかけでした。デモグラを見ているだけではわからず、まさに[WHY]がポイントだったと思います。

樫田:[WHY]は流動的でかなり不確実性が高いものですが、データ量も分析の技術も向上しているので、ユースケースを見つけ出せるようになってきました。その上で、山代のようなプロフェッショナルなマーケターが、リソースとコストを計算して突っ込めると、再現性をもって、非連続な成長が見込める。これがグロースの考え方です。

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この記事の著者

西井 敏恭(ニシイ トシヤス)

オイシックス・ラ・大地株式会社 CMT/GROOVE X株式会社 CMO/株式会社シンクロ代表取締役社長。 オイシックス・ラ・大地株式会社 執行役員兼 CMT(チーフマーケティングテクノロジスト)としてサブスクリプションモデルのEC戦略を担当している。 2001年から世界一周の旅に出る。帰国後、旅...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

マチコマキ(マチコマキ)

広告営業&WEBディレクター出身のビジネスライター。専門は、BtoBプロダクトの導入事例や、広告、デジタルマーケティング。オウンドメディア編集長業務、コンテンツマーケティング支援やUXライティングなど、文章にまつわる仕事に幅広く関わる。ポートフォリオはこちらをご参考ください。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2021/06/22 09:00 https://markezine.jp/article/detail/35849

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