詳細なペルソナ設定でインサイトの機微を探る
では、Lideaで集めたデータはどのように整備され、活用されているのだろうか。ライオンでは、Lideaに接触した会員登録者のデモグラ、どんなコンテンツを見ているのかといったデータはすべて、同社DMPの中に格納されていくのだという。DMP内の生活者データは個人情報にあたるものではなく、プライバシーに配慮しながらもそのデータを活用してブランドのIMC戦略立案やコミュニケーションの調査・調整・改善、CRMに活用するのだ。
つまり、コンテンツのOUTを増やしながら、データのINを拡充していくというのが、オウンドメディアの表側の役割。対して裏側の役割は、接触データをDMPで分析・活用する仕組みだ。

データ収集を進める一方、その理解はどのように行うべきなのだろうか。ライオンではLidea会員から女性だけでも18タイプのペルソナをつくり、会員たちが現在どのようなライフステージにあるのかを図にして可視化しているという。ライフステージが変わるタイミングは、生活用品を切り替えたり選び直したりするタイミングだからだ。
これらのペルソナは機械的に決めていくことができないため、まずはデータのファクトを基にチームでディスカッションを重ねるという。「こうした泥臭い作業を繰り返しながら、この人はこういった人なのではないかと仮説を立てる」と比留間氏。仮説を立てたら、さらにデータを使って検証する。それを繰り返すことで徐々に「確からしい」ペルソナになっていくという。
「たとえば“洗濯”という行為自体は多くの人にとって同じでも、その中に潜むインサイトは個人によりかなり違います。『ピシッとしたシャツで清潔感にあふれたイメージでいたい』『子どもに清潔な衣服を着せることで、ちゃんとしていると思われたい』など様々です。そうした理解の上で『誰にどういったコンテクストで、その洗剤のUSPを訴求すべきなのか』を、DMPを使い分析しています」(比留間氏)
38のクラスターインサイトで生活者を理解
Lideaには、集まる生活者のライフステージやインサイトを捉え、スピーディーに分析・発信・検証に活用できる仕組み「Li-flag(ライフラッグ)」がある。
ライオンのDMPデータ内から、デモグラ、興味関心、購入商品、暮らし方を抽出し、そこによく行くチェーン店、休日によく行く施設や場所といったデータも連携させることで、その生活者がどのような価値観で生活しているのかを導き出していく。

たとえば30代のDINKS女性で「ワキ汗」「臭い」「菌(の繁殖防止)」に興味を持つある人物が、普段買っている商品は何か、どういったメディアにどんなタイミングで接触しているのかということが、自社DMPの変数を掛け合わせることでわかるという。人物像を、かなり高い解像度で可視化できるのだ。
ペルソナのライフステージを細かく見ていくと、そこに家事や日常の生活の中でどういった悩みが多く発生するか、データの中から読み解くこともできる。
「1つのIDを多様な変数でひたすら修飾して説明する、”人となり“のデータを集めるのがLi-flagの仕組みです」(比留間氏)
また、会員ユーザーのライフステージ、デモグラを18のライフステージにクラスタリングしたデータとしてまとめることができ、またLideaの閲覧記事の傾向から、インサイトや生活の課題傾向を指し示すインサイト抽出によって、38におよぶクラスターインサイトに分けることが可能だ。
こうして分析したデータは、コミュニケーションやブランドの商品紹介などの際に、生活者の心の琴線に最も引っかかるであろう表現を探るために活用されている。