対デジタル広告比でCTRを3~15倍にしたデータ拡張
Li-flagで解像度を高く捉えられるとしても、「全体量のボリュームがなければ、当然ブランドのマーケティングアクティビティに活用できない」という比留間氏。生活用品のような低価格かつ低関与の商材は、100人に宣伝をしても効果は薄い。そこでライオンがPOCとして果敢に取り組んでいるのが、データの拡張だ。
データを拡張するときに重要なポイントは、その教師データとなるデータの頑健性。そのためライオンとしては、少ない量であっても、この教師データとして耐えうるデータ精度を得ることを、ライフログの解析時に非常に重要視しているという。
無理なく“広げ過ぎない拡張”でボリュームとクオリティのコントロールをしていくことが求められるので、担当者の技量や知見に依存するところも大きい。

「日々ラーニングして積み重ねていくことで、最終的にマーケティングROIに貢献できるのかなと思います」と比留間氏は語る。
昨年の試算では、対デジタル広告比で誘導効率(CTR)が、Lideaのデータで拡張した配信のほうが3~15倍に。獲得効率(CPA)としては4~8倍が出せているという。
まず、LideaおよびLi-flag、そこを支えるDMPの仕組みを活用しファーストパーティデータを基に生活者像を可視化する。そこから頑健性のあるデータを基に拡張した精製データによってマーケティングアクティビティにインパクトを出す。「オウンドメディアはこの循環をつくるためのハブです」と比留間氏はいう。
オウンドメディアこそ“マーケティングのエコシステム”
オウンドメディアによってDMPにデータが拡充されていくことで、人物像の解像度はさらに高くなる。比留間氏はさらに「コミュニケーションに使用するのはもちろん、より上流の戦略立案にも活用できる」と、その可能性の大きさを示す。
自社で新しいサービスや商品ができたときに会員組織を持つオウンドメディアがあることで、スピード感のあるアンケート調査やPOCを実行でき、時間コストがかなり削減できるという。
「オウンドメディアの役割を大局で表現すると、マーケティングのエコシステムなんです。オウンドメディアには様々な捉え方がありますが、結果的に見れば“コストを低減できるもの”だと考えられます」(比留間氏)

マーケティングROI・ROASを考えるとき、オウンドメディアで売上が上がることはもちろん喜ばしい。ただ、売上については外部要因の影響も大きく、「オウンドメディアがあるから何%売上が上がった」と証明することは非常に困難だ。それを指し示す努力や分析は可能だが、そもそもその労力もコストとなる。
比留間氏は、オウンドメディア運営をこの規模で実施していく場合、確かに運用コストはかなりかかると述べつつ、「予算を獲得し有益な投資を行うためにも、会社の経費や設備投資に対し、見合うパフォーマンスを常に証明することが重要」だと語る。
Lideaは今後も革新的なユーザー機能や、データナレッジの拡充を予定しているという。トライアンドエラーを繰り返しながら、新しいオウンドメディアの形を模索し続けるようだ。比留間氏は「皆様の頭の片隅においていただき、ときどき見に来ていただけると嬉しく思います」と講演を締めくくった。