事例:プレミアム・アルコールの新しいアイデア
現状のプレミアム・アルコールはブランド力のある銘柄が想起されやすい。そのような市場でも、新しい価値を訴求し、高くても売れるアルコールのアイデアをマインド・アナロジーによって抽出するための自主調査を実施した。
対象者は週に1回以上プレミアム・アルコールを飲用する男女各4名ずつとした。中でもアルコールに対する好意度が高く、かつ他カテゴリーでお気に入りのモノの良さを語れる人を、事前アンケートの自由回答を参考に選抜した。
インタビューの流れは以下の通りである。
1.お気に入りのモノ・コトについて語ってもらう
- (1)お気に入りの理由をできるだけ多く挙げる(例:かわいい)
- (2)(1)はどういう機能や性質だから実現しているのか(例:丸みのある形)
- (3)(1)によって、どんな生活や気持ちが実現できるか(例:癒される)
上位概念((3)生活価値)、中位概念((1)欲する理由)、下位概念((2)機能要件)をニーズ構造とし、完成させる。お気に入りのモノ・コトを変えて3回繰り返す。
2.お気に入りのプレミアム・アルコールについて語ってもらう
流れは1.と同様。現状満たされているニーズ構造を把握し、後ほど差を見出すことが目的である。
3.お気に入りのモノ・コトからアルコールへ転換
1.で挙がった、お気に入りのニーズ構造のようなことをアルコールに置き換えると、どのようなことが考えられるかを、思いつきやすいものから出してもらう。置き換えゲームのような感覚で、自由に発想してもらうことが大事である。
他カテゴリーからの発想によるアイデアの傾向
8名のインタビューの結果をもとに、現状のプレミアム・アルコールとアナロジー発想の価値の違いを分析した(図表2)。

現状のプレミアム・アルコールについてのお気に入りの理由は外見=パッケージから想起されることと、味の優位性がほとんどであった。その結果、高級感や特別感につながっている。一方、アナロジー発想では、他のカテゴリーで価値と感じた「楽しい」「自己表現」「リラックス」といった上位概念から発想することが多く見られ、中身=飲料の見た目や成分、味の特徴において詳細な要素が挙がりやすかった。この比較からも、普段のアルコールを考える思考では考えにくい、アナロジーによる発想の転換により新しい視点が付与されやすくなるといえる。
また、発想されたアイデアの一例を図表3にて紹介する。より差別化が図れそうである「変化が起こる」「見た目の特別観」「パッケージ」の観点でのアナロジー例を抜粋した。

たとえば40代の専業主婦の女性は、ママ友とのコミュニケーションを大切にしており、お気に入りのモノもコミュニケーションに起因するものが挙げられた。スイスの時計は装着方法が変わっており、バンドを変えられるなどの特徴から、時計について話しかけられやすいという。ネイルは季節に合わせたデザインにすることで注目され、コミュニケーションに役立っているとのことだ。人とのコミュニケーションという生活価値からアルコールを考えると、「パッケージにシールがついていたら子供とのコミュニケーションになる」「おみくじ入りだと飲むときのネタになり、話がはずむ」といった発想につながり、新しいアルコールに期待を寄せていた。