生活者は「ストーリーの主人公」
MZ:では、現在がサードステージ?
土代:そうですね。ちょうど3月にプレスリリースとしても発表しましたが、新たなステージへ進化することを打ち出し、複数の取り組みを開始しています。
今年1月、スイーツ感覚で楽しめるビールというコンセプトで商品化した「大人のチョコミント」を発売したところ、SNSで拡散して一瞬で完売したんです。販売はECのみですし、販売数も既存のブランドとは比較になりませんが、Amazonで販売した際にもナショナルブランドのビールの中でも1位を獲得するなど、反響に手応えがありました。
ここまでの積み重ねが、新たな価値として確実にお客様に届いていると実感しました。これを弾みに、よりブランド強化へと踏み出した形です。現在では、KPIとして売上などを追っています。
MZ:ステージの変化によって取り組みにはどのような変化を加えていきましたか?
土代:今まで通り、つくりたいビールのアイデアや思いを寄せてもらうことは変わりませんが、その方々を「人生ストーリーの主人公」と名付けて一層フィーチャーしていくことにしました。
当社のブリュワー、またキッチハイクやデザイン会社の方と一緒にたくさんのアイデアを読ませてもらうと、皆が「これいいね!」と惹かれるのは決してスペックではないんですね。こういうシチュエーションで飲みたいからこんなビール、というのではなく、その人がなぜこのビールをつくりたいのか、背景にある活動や心が動かされた瞬間の思い出に、ぐっとくるんです。
実際に商品化した際にも、買っていただく方に発案者さんの思いを共有してもらうと、ただおいしい以上の価値が生まれることに気づかされました。
ラジオで主人公に語ってもらう
MZ:当初から、一人のアイデアを掘り下げることにこだわりを持たれていますが、その枠組みから生まれる価値が想定以上になっていたわけですね。
土代:そうですね。アイデアをたくさん集めるというよりは、思いの強い人に渾身の企画を出してもらうほうがいい、と思うようになりました。
その転換を背景に、新たに始めたことがいくつかあります。思いの部分では、以前はLINEでの気軽な応募も受け付け投稿できる窓口も設けていたのですが、ガラッと変えて「ビールに込めたい人生をラジオで語ってもらう」仕組みにしました。
YouTube上でスタートしたトーク番組「RADIO HOPPIN’ GARAGE」で、現状は過去の発案者さんに登場いただいています。さらに、noteにはインタビュー記事も掲載していきます。
ラジオがある意味、商品開発でいうところのコンセプトづくりやコンセプトスクリーニングになっていく位置づけです。一緒にビールをつくっていくブリュワーにも、まずこの番組で発案者さんの思いに触れてもらい、そのあと実際に打ち合わせを重ねて、イメージを膨らませながら着地点を探ってもらえたら、と。
MZ:これまで以上に個性とストーリーがある商品ができそうですね。
以前からリアルイベントをかなり頻繁に行われていましたが、去年からはなかなか開催が難しい状況があります。今、ファンの熱量を高めたり、コミュニティを拡大していくための策はどうお考えですか?
土代:ひとつは、これまでの皆さんと共創してきたHOPPIN’ GARAGE自体のストーリーを込めたフラッグシップビール「ホッピンおじさんのビール」の発売です。また、このビールと新作ビールをセットにした定期便も開始しました。新作ビールの発案者さんの思いをブックにまとめて、ストーリーを追体験できるようにしています。
