※本記事は、2021年6月25日刊行の定期誌『MarkeZine』66号に掲載したものです。
D2Cを「紙芝居」から「飴玉」の事業へ
D2C(DNVB)を語る際に、著者の造語として、「紙芝居」事業モデルにたとえた場合の「飴玉」は何か、という比喩を使っている。一見華やかなD2C事業やその売上はただの「紙芝居」に過ぎず、その事業が将来的に提供する価値である「飴玉」を見極めるアンテナを上げておきたい。
現在のD2C事業の俯瞰は、カオスマップで知られるLUMA Partnersの「State of Digital 2021」とIABの「2020 IAB 250 to Watch: COVID Impact Report(PDF)」を紹介しておく。この2社のレポートを両方セットで読み解くことでM&A事情や新興アイデアが見えてくる。
2020年のウイルス騒動を発端に、株式市場ではD2C事業バブルが起きている。それがバブルなのかどうかは、収益のボトムラインを確認すれば判断が速い。どんなに売上が成長していようとも、「薄利」「赤字」が加速したままであれば、その事業は出口の見えないトンネルの中で紙芝居だけを膨らませている。
過去に取り上げた出前館やNetflixは、飴玉が不在の紙芝居の典型例だ。一方、Amazonにとっての飴玉は、営業利益の6割を生み出すAWSである。EC事業部門はもはやAWSを利用してくれる「事業主集めの紙芝居」側となり、足掛け10年の下準備があった。Netflixでさえコンテンツ配信にAWSを利用しているAmazonの顧客だ。