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特集:戦略実行を支える、強いチームの作り方

悲しいかな、これが現状なのです。未だマス×デジタルが進まない広告現場の突破口

言語の共通化がスムーズな組織連携の第一歩

 「マス」「デジ」統合コミュニケーションであれ、違うカタチのコミュニケーション設計であれ、難しいのはそのメソッド開発よりも「Execution」への導入だと感じています。外部エージェンシーやプロダクションに適切なディレクションを与え、ちゃんと狙い通り以上のカタチにできるか、ということ。そしてこの障壁になるものとして組織による「言語」の違いがあります。

 デジタルに長けた技術系スタッフとマス系のクリエイターが話しても、ほとんど会話になっていないという経験を見たりされたりした方は多いのではないでしょうか。「バベルの塔」ではないですが、現在のマーケティング現場はいろんな言語が散逸している状態とも言えるでしょう。デジタル系の人たちは主に数字で意図を伝えようとし、マス系の人たちは主に思いを汲み取ろうとしたりぶつけようとしたりします。

 属する組織によって大事にするものが異なると、自分たちの都合の良い解釈をしてしまいがちになります。たとえば「ブランディング」というワード一つ取っても、「イメージCM的なもの」で通用する組織もあれば、「ターゲットとの絆作り」と解釈する組織、「店舗での体験」など様々です。かくして「なんでこうなるんだ?」「こう伝えたはずなのに」といった接続不良が経営層からマーケティング部署、外部スタッフに至るどこかで起こりがちとなります。この言語の蛸壺化も組織の部分最適がもたらす悪習と言ってよいのではと思います。

 マーケティング・アドバイザーとしての僕はどちらかと言えばExecutionに軸足を置いていますが、我々が接続し会話するポイントは「顧客体験」をどうするかです。顧客体験のためのメディア設計であり、クリエイティブなのです。そして、一つのポイントにおいて同じ言語で意思疎通を図ることが想定通り以上のアウトプットにつながります。そして、言語を共通化することは各マーケティング組織をスムーズに接続し、大きな有機体となす第一歩であると言えます。

「or」発想からの脱却を!

 ところで広告業界はいつからか「or発想」に侵されているように感じています。とりわけメディアの評価についてはマスとデジタルのどちらが優れているか、といった文脈でよく語られますよね。これは、マス系=総合系エージェンシーに対してデジタル専業系エージェンシーがチャレンジを試みている、そういう背景も大きく影響しているように感じられます。組織のポジショントークが幾分混ざっているということです。日本のマーケティング現場はいわば奪い合い文化で、毎日のように扱いやシェアを獲った獲られたで一喜一憂しています。広告主や中立の立場のマーケターはこれらの影響を受けないよう注意すべきと思います。

 これは一例ですが、「デジタルマーケティングの予算がテレビCMの予算を超えた」といったニュースを見聞きすることも多いです。ですが、それはWebがテレビに置き換わることに直結するものではありません。Webメディアの肝はターゲティングにありますが、ターゲティングがかえって顧客層を狭めてしまい、悪効率に陥ることだってあるでしょう。ノンターゲティングによる潜在顧客を掘り起こすリーチ力や、リーチ単価のコストパフォーマンスは今もテレビのほうが良いです。広告主は「and発想」に立つべきです。組織のポジショントークに左右されることなく、デジタルとマスのいいとこ取りをして、全体を成功に導く、そんな当たり前の考え方を広告業界に浸透させていく必要があると僕は思っています。

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小霜和也(コシモカズヤ)

マーケティング・アドバイザー/クリエイティブ・ディレクター/コピーライターノープロブレム合同会社/株式会社小霜オフィス代表 1962年兵庫県西宮市生まれ。東京大学法学部卒業後、博報堂入社。1998年退社。現在クリエイティブディレクターとして広告クリエイティブの企画制作、またマーケティングアドバイザーと...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2021/11/01 16:17 https://markezine.jp/article/detail/36769

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