定性データで悩みを可視化し、2,000枚のはがきで磨いた感性で企画にする
――こうした詳細なインサイト分析からどのように企画し、コンテンツに落とし込むのでしょうか?
山岡:データからは目に見える課題や困っていることはわかります。それに対し、雑誌でどんな提案をすれば役に立つのか、どんな言葉で説明したらわかりやすいのか、どういうビジュアルであれば楽しい気持ちで読めるのか、といったことは編集部員が想像力を働かせて形にしていきます。

編集部員は20代から50代まで、様々な年代のメンバーがいます。メインの読者と同世代の部員は一人もいないわけですが、それでも1人1人の中に「65歳のA子さん」といった、いわゆるペルソナ像があります。
その秘密が、読者から毎月2,000枚ほど届く「ご意見はがき」です。雑誌の感想などを書く一般的な欄とは別に「ハルメクへの短い手紙を書いてください」という欄があります。
そこには「孫が生まれました」「腰が痛い」「庭の沈丁花が綺麗に咲いた」といった日々の雑感がぎっしり書いてあるんですね。この2,000枚を編集部が手分けして1枚残らず全部読んでいます。
毎月毎月手分けしてはがきを読み続けていると、読者世代の方々の考え方、困っていること、今の気分などが自分たちの中に蓄積されて、「65歳のA子さん」あるいは「70歳のB子さん」が自分の中にコピーされていくわけです。
そこに生きかた上手研究所から上がってきた定量的なデータも反映して、企画を編み出していきます。素案から最終段階まで、編集部みんなで何度も話し合って企画をブラッシュアップしています。
雑誌とWebコンテンツのすみ分け
――御社はWebにも注力されていますが、雑誌とWebではどのようにコンテンツのすみ分けをなさっていますか。
山岡:雑誌というのは、出会いや発見のメディアだと思っています。自分では気づいていなかったけれど、雑誌を読んだら「そういえばこういうことが知りたかった」とか「こんな世界があったのか」と思っていただけるような、新しい扉を開ける役割を意識しています。雑誌は保存できますから、何年も経ってから再び読むと、また新しい発見がある。そういう存在でありたいなと思ってコンテンツを配置しています。
一方Webメディアは、検索が基本なので、自分で認識している顕在化された悩みや疑問にすぐ答えが出ることが大切です。たとえば「コロナ ワクチン 予約」など、自分でもはっきりと「これがわからない」「これが知りたい」とわかっていることを調べるのがネットですよね。ハルメクWEBでは検索に対して、いかにわかりやすく、信頼できる答えを用意できるかを重視しています。役割としては住み分けていますが、両方のハルメクをうまく活用いただければと思っています。