熱量が薄まらないワンチーム方式
クリエイティブなマーケティングを実行する上で、クライアントが広告会社にアウトソースして、広告会社がさらに必要な部分をアウトソースするというフローは一般的である。しかし、シズる式では、 “家族”のような座組でワンチームでプロジェクトを推進していくという。こうすることで熱量が外に逃げず、純度が高いままアウトプットに繋げられる。
皆川:クリエイティブの中身と、それをどうPRしていくかという部分は、別々に考えられるケースも多いです。しかしシズるでは、それらを統合して進めています。たとえばsioで期間限定で販売したユーグレナを使ったお弁当商品の「優弁(ゆうべん)」の打ち合わせも、料理を作る人と企画を考える人とクライアントが同じ空間で、レシピ開発もプロダクトのネーミングも同じ場所で同時に進めました。“クリエイティブ”と“おいしい”が近いところでウロウロしている、こういうやり方は新しいと感じました。

鳥羽:同時に話すと全員がコミットできるし、熱量が薄まらないんですよね。常に課題解決のゴールにワンチームで向かえる環境は、実はあるようでない。純度が高くて、ハードワークできて熱量があるメンバーでやったら、大体うまくいきます。
本木:弊社社長の出雲も“今後は信頼のビジネスが重要になっていく”と著書『サステナブルビジネス』(PHP研究所)の中でも話していて、それにも通じるものがありますね。従来の、今まで実績を見て信用できるか判断する“信用=クレジット”のビジネスから、『この人たちは信じられるから一緒にやっていこうよ』、という“信頼=トラスト”のビジネスへ。信頼することで一つ一つのコミュニケーションコストも減っていくし、 スピードも速くなる。
クライアント側は通常は『ちゃんとやってますか?』ってパートナーに確認したくなると思うのですが、そうではなく、基本、いい方向に進めてくれているという信頼の中でやっていける。『こうやってください』と依頼するのではなく、『これ絶対いいから、こうやろうよ』みたいなスタンスでお互い話せています。
鳥羽:“信用”は“電話したら必ず返ってくる”、とかそういうことじゃないですか。“信頼”は、たとえば、『あの壮ちゃんが全力出してもできなかったなら、シズるでやってみてダメだったなら、しょうがないね』、って思えるかどうかなんです。僕らはユーグレナさんもそういうパートナーだと思っています。
お互いが全力を出して、どんどんみんな熱量に侵されている。時間が経てば経つほど、いいチームになってきている。

皆川:僕もユーグレナさんに対して、プレゼンらしいプレゼンは1回したくらいで。かしこまってプレゼンの機会を設けることで、スピード感が落ちるし、『もう1案ないですか』とかが始まったりして決断までに時間がかかるので、弊害になることもある。ワンチームでスピード感をもって進んでいくのは僕自身あまりなかった体験ですが、すごくいいと思っています。
本木:『一回持ち帰って確認します』というプロセスがあまりない状態で進めるようにしていて、スピード感も、熱量も失われない。このプロジェクトに関しては、初期段階からチームビルディングがすごくうまくいっています。
鳥羽:プロジェクトがある程度のところまできて、より高みの上らせたいときは、越境して、いろいろ外のメンバーとチーム作らないと掛け算にならない。僕はそれをケトルとやったし、ユーグレナさんはそれをシズるとやる。そういう時代になってきていると思います。
本木:この座組は難しいですよね。現状、ほとんどないんじゃないかなと。シズるさんの熱量を、逆にクライアント側が消してはいけないと思いました。だから最初から、プロジェクトメンバーは慎重に選びました。シズるさんのメンバーも含めて最初は最小単位で3、4人くらいで、ぎゅっとしたコアメンバーで始めましたね。
皆川:ユーグレナさんて、スタートアップ気質で、鳥羽くんや僕たちと似てて。みんなロマンチストだし。熱量がすごいというか。オンとオフメリハリ分けていながらも、基本仕事が好き、っていうか。
鳥羽:そこが、今の時代のストロングポイントになると思う。昔に比べて会社に希望を持てなかったり、ワクワクできなくなってきた時代の中で、みんな全員ピュアにいいことしたい、もっとよくしたいっていう延長線上でハードワークができるのは、すごく強い。
コロナを経て、みんなが優しくなりたい、いいことしたい、そんな風にエネルギーが前向きに働いているとも思う。足りないところを補うチームで、仕事がふくよかになっていくのがめちゃくちゃ健全です。みんなを幸せにしたいという感情にみんなのベクトルが向いていて、そこに向けて最大化するためにできることが何かを、俯瞰で冷静に見据えていきたいです。