マーケター育成で重要なポイントは?
BtoBマーケティングを31年やってきて、つくづく思うのですが、BtoBのマーケティングは実務の割合がすごく多い。これはBtoCとBtoBの両方を経験するとよくわかると思います。BtoCの場合は、良い製品を作る・値付けをする・チャネルを決める・プロモーションを企画する、というようにマーケティングをちゃんと設計できていれば、理論でどうにかできる部分が大きい。一方でBtoBの場合は、展示会でどうやって名刺を集めるか、営業担当者の机の引き出しにある名刺をどうやって出してもらうか、など理屈ではわかっていても、やってみないとわからないことが多い。だから私は、BtoBマーケティングのスキルは、理論と実践の綾織りでないと身につかないと言っています。
しかし現状は、理論はわかっているけど実務ができない人と、理論は身についていないけど現場で汗をかいて実務をやっている人の二者がいる状況です。たとえば、前者の場合、「データをきれいにしないといけませんね」と簡単に言いますが、「どうやって?」と聞かれたら、答えを返せなくなる。実務の世界は、経験しないとわからないことが多い。対して後者の場合は、自分がやっていることがマーケティング戦略のどの部分に該当するかもわからず、ただ作業するだけになっています。つまり、マーケターとして二者いるのだけれど、両方を兼ね備えている人材はいないんですね。理論を知っている人には実務を学ばせなければいけないし、実務で汗をかいている人は目の前の仕事を理論として学ばせなければいけません。
実はシンフォニーマーケティングでは、昨年迎えた30周年の記念事業としてBtoBマーケティングの研修サービスを始めました。これは、社内で社員向けに行っていた研修を外部向けに再構築したものです。
社内でのマーケター育成の仕組みを教えてください。
シンフォニーマーケティングでは、入社して1ヵ月以内に試験を受けてもらい、合格するとエレメントリーに入ります。エレメントリーっていうのは、幼稚園です(笑)。エレメントリーの次は、ブロンズ→シルバー→ゴールド→プラチナ→タイタンと、研修プログラムはずっと続いていきます。各レベルで身につけるスキルが決まっていて、たとえば、ブロンズはお客様とのミーティングに同行できるレベル、シルバーはそのミーティングに積極的に参加できるレベル、ゴールドはファシリテーションできるレベルです。
プラチナになると、チーフマーケティングオフィサーが務まるレベルにグッと上がります。たとえば、売上数千億の企業のCMOができるくらいのイメージです。タイタンは、売上数千億の企業でグローバルのチーフマーケティングオフィサーが務まるレベルですね。ちなみに、これまでの31年間でタイタンまで到達したのは、副社長一人だけです。
加えて社内には、座学の研修と試験、Eラーニングの仕組みがあります。また、私が講演したセミナーなどは録画し全社員が閲覧できるようになっています。オンラインで学習と復習ができる環境があるので、コロナ禍でも問題はありません。
コロナ禍での変化というところでは、多くのBtoB企業でマーケティングに対する期待が高まっています。大企業の場合、売上の90%近くが既存顧客によるものであることが多く、営業だけで事足りていましたが、これまでの営業がコロナ禍でできなくなり、「どうにか空中戦でやれないか?」と、デジタルマーケティングへのニーズと期待が高まっているのです。そうなると予算が膨らむので、研修にかけられる費用も増え、今我々が提供している研修サービスは依頼がすごく立て込んでいる状況です。会社の存亡を決めると言えるくらいマーケティングが重要であることが、やっと実感としてわかってきたのではと思います。