顧客メリットを考慮したデータ活用が肝
嶋田氏が勧めるのは「プログレッシブ・プロファイリング」と呼ばれる方法だ。まずは早いうちにID登録を促し、後から少しずつデータを増やしていくというもの。たとえばユーザーが家電サイトで冷蔵庫や洗濯機を見ている時、「家族はいますか?」などの質問を投げかけて回答を得るようにしていけば、そのユーザーの生活状況や家族構成などが少しずつ見えてくる。
さらにソーシャルログイン機能を実装していれば、SNSを通じたメッセージの送信など、次のアクションにもつなげられると嶋田氏は語る。
第三の活用メリットは「ユーザーの同意に基づく全社的なデータ活用の実現」だ。総務省の調査結果によると、日本国内の消費者は企業が自社のために顧客データを活用することについて、他国(特に中国)と比べると消極的であり、不安も持っているという(出典:総務省「令和3年版 情報通信白書」)。
「顧客メリットを重視することは基本として、ユーザー毎の規約への同意状況に基づいて全社的にデータ活用を推進していくことが、顧客軸マーケティングの先行企業として活動していく時のポイントになります」(嶋田氏)
CDCには、ユーザーがいつ、どのタイミングでデータの取得に同意したのかを管理する機能がある。利用規約が更新されると、ユーザーがWebサイトを利用する際にポップアップで再度同意することを促す仕組みが備わっている。また、ユーザー単位での同意状況をCRM、CDP、MAなどと連携することによって、同意に基づいたデータ活用をシステム的に制御できるようになる。
数年単位のロードマップを描き、地道な体制整備を
また、全社視点で顧客軸マーケティングを展開する際のポイントとして、嶋田氏は「利用者目線」と「事業者目線」の両方で戦略を立案する必要性を挙げる。利用者目線では「メッセージの発信頻度が多くて迷惑にならないか」「個別サービスを訴求するあまり、矛盾するメッセージを送ることにならないか」など、共通IDに紐付くサービスや内容に沿って考えていくことが望ましいという。
一方、事業者目線では共通IDの取得方法やデータの活用方針について意思統一することが重要であるとし、それによって全社活用の仕組みが整ってくると嶋田氏は語った。
4つ目のメリットである「全社的システム基盤の構築」について語るにあたり、嶋田氏は全社的システム基盤の概要を示す次の図を紹介した。
各サービスやポータルから入ってくる顧客データをCDCのようなCIAMに集約し、顧客IDの統合や同意管理などを行うことで全社展開の素地を作る。嶋田氏は「ID連携やデータ統合は数カ月で終わるような簡単な作業ではない」と強調した上で、「1つのロードマップとしてこうした仕組みを念頭に置き、数年かけて整理することで顧客軸マーケティングの先行企業と同じような体制整備が進みます」と述べた。
NTTコムオンライン・マーケティング・ソリューションは、国内の大手メーカー、エンタメ企業など幅広い業種においてCDCの導入・運用支援実績を多数抱えており、最近はBtoBマーケティングにおけるID統合の相談も増えているという。また同社はCDCだけでなく、分析基盤の提供やマーケティングシステムの運用・導入支援にも強みを持つ企業だ。嶋田氏は「顧客軸マーケティングの実現に必要な各種ソリューションを揃えているので、ぜひ相談してほしい」と語り、講演を締めくくった。
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