コトラー氏が取り上げた新技術、マーケティング業務への影響は?
そして、MarTech分野における新たなマーケティングツールの用途や特徴にも触れる。例を挙げると、AIやアルゴリズムと人間の経験値が組み合わさり、よりよい判断ができるようになる。デジタルおよびソーシャルメディアでは、音声認識の利用が増える。顔認識に関しては、感情の把握といった利点と同時に、データプライバシーへの懸念がある点に配慮する必要がある。また拡張現実、仮想現実は、工場設立、製品製造、販売といった一連の動きをシミュレーションして投資判断をする上で重要だ。さらにマーケティングオートメーションによりAmazonが商品をドローンでドアの前まで届けたり、自動運転車で宅配したりする。

コトラー氏は様々な新技術を取り上げた
企業はこうした新たな動きの中で、カスタマージャーニーを捉え、消費者とのタッチポイントのあらゆるところで心地よい接点を提供しなければならない。だからこそペルソナの理解が不可欠だ。人を思い、B2Bでもビジネスパーソンのことを考えて、ペルソナを作る。興味深く、良い刺激を与えるコンテンツが求められる。
コトラー氏はインフルエンサーの活用にも好意的で、実際の製品の利用シーンや満足度を伝えることができるとする。オムニチャネルの重要性も強調するとともに、製品開発についてはエリック・リース氏の「リーンスタートアップ」の運用を勧める。社会的意義に訴えるソーシャルコーズマーケティングの文脈では、「ホットドッグを食べると寿命が36分縮むという発表もある」を引き合いに、飲酒、薬物利用、不摂生など身体を悪くする行動を変えるよう呼びかけた。
新しい技術とマーケティング業務とのかかわりもますます深くなる。まず、マーケティングの意思決定において、より多くのアルゴリズムを頼るようになる。実行プロセスにおいても、より多くの領域が自動化される。そしてパフォーマンスの判断には、数多くのキートメトリクスが導入される。
さらに、SiriやAlexaといったボイスアシスタントがマーケティング上で役割を果たしたり、新製品のテストマーケティングにはVRのツールが使われたりする。ニューロサイエンスに関連するツールも取り入れられるようになる。
広告の未来、見直されるべき女性の描かれ方
広告の未来はどうなるのだろう。従来型の広告、トラディショナルアド(TA)はブランド構築においては一定の効果がある、とコトラー氏。一方で、ワンパターンの30秒コマーシャルを流すのは一つのメッセージを全員に届ける効果はあるが、消費者の違いが分かってないのも事実だと指摘する。だからこそ、TAには、売り上げに貢献するデジタルアド(DA)を組み合わせることが必要になる。同時に、メディアやクリエイティブエージェンシーがコロナ禍に顧客を維持できなかった点に触れ、その信頼低下、関係性の棄損、売り上げの減少にも言及した。
次にP&Gのマーク・プリチャード氏の言葉を引用し、「4万ある広告のうち20%が女性について誤った描き方をしている。セックス関連(Sex Sells)は売れる、というのは時代遅れの概念だ。広告は女性をどう表現するか新たに考え直さなければならない」と述べ、広告は信頼に値するものであるべきという考えを示した。