マーケティング手法もニューノーマルへと移行
コロナ禍が様々な活動に影響を与えた2021年。第5波の収束後も、リアル店舗とECの使い分けが定着したり、対面とオンラインのハイブリッドでビジネス活動が展開したりと、社会全体が「ニューノーマル」なスタイルに移行していることがうかがえる。
マーケティングも新しい形が模索される中、改めて注目を集めているのが紙のDMだ。日本郵便 郵便・物流営業部 担当部長の松本 俊仁氏によると、コロナ禍以降、通販や通信、保険、金融などの領域で、特に活発に活用されているという。またBtoBビジネスにおいては、DMでセールス活動を補完している例も見られ、松本氏は「この使われ方は今後より増えていくのではないか」と予測している。
また、一般社団法人 日本ダイレクトメール協会 専務理事 椎名 昌彦氏は、コロナ禍で対面の接点が作りにくい中、DMを新規顧客獲得の飛び道具として活用することを提案している。
「デジタルメディアでは新規顧客を多数、かつ精度高く取り込むのはなかなか難しく、お客さまが興味を持ってくれるのを、受け身の姿勢で待つことになってしまいがちです。一方、郵送で届くDMなら、ターゲットを絞り、クリエイティブを作り込んで特別感を伝えることもできます。新規顧客にアプローチする『飛び道具』として、大きな武器になるのではないでしょうか」(椎名氏)
カギは「押しつけないコミュニケーション」
DMをコミュニケーションに取り入れる場合、どんなことがポイントになるのだろうか。日本のマーケティング研究の第一人者であり、DM活用を中心としたデジタル×アナログの実証実験を2016年から監修してきた早稲田大学 商学学術院の恩藏 直人教授は、一つの要素として「押しつけがましくないもの」にすることを挙げている。
「現代が情報過多な状態にあることはよく言われていますが、コロナ禍によりデジタル上で過ごす時間が長くなり、消費者はますます多くの情報に触れるようになっています。日々、膨大な情報を受ける消費者に、少しでも抵抗なくメッセージを見てもらうためには、押しつけがましくなく、感覚に自然に訴えるものにすることが大切です」(恩藏教授)
そのようなコミュニケーションを展開するために、恩藏教授の専門分野である「センサリーマーケティング」の知見が活かせるという。