チャネル選定の視点。リーチ効率以外に重視するのは?
木村:チャネルの使い分けについてもお聞きしてよろしいですか。Uberさんはデジタル・マス問わず様々なチャネルに投資をされていますが、判断軸としてはリーチの効率で見られているケースが多いのでしょうか。それともフレキシビリティーやコミュニケーションとの適合性も見ていらっしゃるのでしょうか?
中川:リーチ効率は重視しています。ただしデジタルメディアの場合は20回、30回と目にすることにならないようフリークエンシーキャップをかけているので、それを踏まえた上でのリーチ効率を見ています。
その上で、前回申し上げたように、Uberではセグメンティングをしっかり行ってレレバンシー(関連性)の高いタイミングでメッセージを出すようにしているので、リーチ効率が必ずしも良くなくても、コンテクストに沿ったメッセージを出しやすい媒体は使うようにしていますね。たとえば駅広告を使うと「帰りに頼んで帰宅後に受け取れるよ」というメッセージを、まさに帰宅途中の人に届けることができる、といったケースです。
木村:いかにレレバントな訴求をするか、という観点からも媒体を見ていらっしゃるのですね。
中川:はい。メッセージの出し分けは今年の上期から設計を始めていて、はっきりとした結果はまだ見えていないのですが、手ごたえはあります。たとえば「旅行に行けない代わりに、Uber Eatsを使って旅行気分を味わいませんか」「育児や家事に忙しいタイミングで、Uber Eatsを使ってみませんか」といったメッセージは、結構響いているのではないかと思いますね。
Uber Eatsの良さは、頼んで楽をするということではなくて、その部分をUber Eatsに任せてもらうことで、本当にやりたいことをやり続けられる、というところにあります。だから、たとえばゲームやスポーツなど「今は席を離れたくないんだ」というモーメントは、とてもレレバントだと思います。実際にTwitchへの出稿を試験的に行っていて、継続的に実験できると面白いのではと考えているところです。
木村:なるほど。そのような視点でUberさんの広告コミュニケーションを読み解くと、また新しい発見がありそうです。
今回のインタビューは、特にスタートアップで頑張っている経営者やマーケターにとても響くと思います。ホワイトスペースでビジネスをしている事業者の方々が大半ですので、ハビットを根付かせることが、最初の課題になるという話。そして、そこに対してのメッセージングの仕方、広告投資の考え方など、マーケティングの神髄と言える部分について、詳しくお答えいただき大変勉強になりました。中川さん、ありがとうございました。
