ユーザーの心情に合わせて施策を当てる
ここまでの話を整理しましょう。KPIツリーを補完する考え方として、次の3つがCVR改善の施策を考える上で重要な要素として挙げられます。
・KPIツリー(行動プロセスの分解):施策を当てる場所
・蓄積型の要素(ユーザーの習熟度や理解度など):実施する施策の適切さ
・衝動型の要素(施策を当てるタイミングなど):ユーザーの心理的受け入れやすさ

ユーザーの心理状態として蓄積型の要素と衝動型の要素を考えることで、KPIツリーだけでは難しかったCVRの要素分解をより広い視点で行えるようになります。
コンバージョンまでのプロセスについて特定箇所での離脱にフォーカスしたり、ファネルを考えたりした後、それぞれのプロセスでユーザーの理解度や習熟度とあわせてどのようなフリクション(衝動)が起きているかを考えることで、具体的な施策をイメージしやすくなるわけです。

同時に、その施策をユーザーに当てるタイミングをユーザーの衝動に合わせられるように考えていきましょう。たとえば、次の目的で施策を考えるとします。
・トップページでの直帰率を減らしたい
・そのために、見たいであろうコンテンツがあることをユーザーに気づいてもらいたい
この場合は「どうやら見たいコンテンツがなさそうだ」と感じるタイミングが、施策を当てるべきタイミングです。これはフリクションの図でいうと「1」の「コンテンツの存在に気づかない」に該当します。しかし、オンラインではユーザーの顔色などを伺うことはできません。
ですので、たとえば次のようなことをヒントにしてユーザーが離脱しそうなタイミングについて仮説を立てていきます。
・トップページで直帰しているユーザーは、どのくらい滞在してから直帰しているのか
・ページの内容はどこまで見てから直帰しているのか
・アクセスする曜日や時間、流入元で特別な傾向はないか
「10秒ほど経過してもトップページから遷移していないのであれば、見たいコンテンツを見つけられていないのかもしれない。この時点ではまだ離脱していないので、そのタイミングで声かけしてみよう」といった仮説をA/Bテストで繰り返し検証していくことで、人間の直感の代わりとしていくわけです。
ユーザーの心理状態やタイミングを見極め、施策に落とし込む
本記事ではKPIツリーの課題を指摘し、その課題を解消するために取り入れるべき考え方として「ユーザーの心理状態」に着目しました。ユーザーの心理状態としては「蓄積型の要素」と「衝動型の要素」の2種類を考えることで、施策の内容と当てるべきタイミングの双方を考えやすくなります。
CVRを構成する要素は多岐にわたるため、KPIツリーを使ってCVRを分解していくだけでは適切なCVR改善施策にたどり着くのは困難です。代表的な離脱ポイントなどを要素分解するだけでは、どうしても短絡的な施策になりやすくなります。
「ユーザーがどのような心理状態にあり、どのような状態を目指すべきなのか」「ユーザーにとって受け入れやすいタイミングはどういうときなのか」という視点をともなって施策に落とし込めば、ユーザーにとっても心地よい体験になり、同時にCVRの改善にもつなげていくことができるのです。
このような施策の実践にあたっては、最初から正解を求めるよりも、仮説を明確にした上で実践・検証のサイクルを繰り返して正解に近付いていくという考え方が大切です。
地道な取り組みになりますが、ぜひコツコツと取り組んでいきましょう。