文脈に沿っていれば「なんでもOK」というわけではない
これまで見てきた通り、特定の文脈をターゲティングできる強みを持つコンテクチュアル広告ですが、文脈に沿っていれば何でもOKというわけにはいきません。広告の役割は、短期的にモノやサービスを売ることにとどまらず、企業の姿勢や価値観を明示し、企業と消費者との間に持続可能な関係性を創出することにあると、私は考えます。この観点で見た場合、文脈の“活用”は一歩間違えると“悪用”になり得るリスクがあるということをお伝えしておきたいと思います。
いかに的確に文脈を捉えていたとしても、文脈を逆手に取ったり、作為的に利用したりする広告は歓迎できません。先の例のように、競合他社の商品が紹介されているページをターゲティングすることで、特定の商品カテゴリに関心を持つユーザーに効率よく接触できるかもしれませんが、やり方次第では“あざとい”といった否定的な印象をユーザーに与えてしまうリスクがあります。
また、冠婚葬祭などの繊細なニュアンスを持つサービスの広告を、たとえば病気や相続についてのページに出す場合、文脈との関連性は高いかもしれませんが、ユーザーが必ずしも快く思わないケースもあると考えられます。さらに、どんなに文脈に沿っていても、毎回しつこく広告が出ることで不快感を持たれてしまう可能性もありますので、広告表示回数を最適なレベルに留めることも気にする必要があります。
第4回のおさらいと次回予告 質問・感想も受け付けています!
今回は、コンテクチュアル広告の典型的な例をもとに、適切な“活用”と“悪用”のリスクについて考察しました。主なポイントを以下にまとめておきたいと思います。
・文脈の活用とは、ユーザーの興味を踏まえて有意義な選択肢を示すこと。
・特定の文脈を味方につけることで、相対的に自社の価値や存在感を高めることが可能。
・文脈はユーザーと自社との共通点を創出または強化し、お互いを結びつけることも可能。
・コンテクチュアル広告の精神は、健全性と良心性にあることを忘れてはいけない。
・文脈を誤って“悪用”してしまうと、企業イメージを低下させる大きなリスクがある。
次回は、これまでの議論を踏まえた総括編として、コンテクチュアル広告の今後の進化・あり方について議論を重ねていきたいと考えています。また、みなさんがお持ちの疑問にもお答えできればと思いますので、ぜひ本稿の感想やご質問などがありましたら、MarkeZineのFacebook投稿にコメントいただけますと嬉しいです。
