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MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

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MarkeZine Day 2025 Retail

MarkeZine Day 2021 Autumn

コロナ禍でも最高の売上を達成!ウテナ中島氏×arca辻氏が語る、今後のマーケティングに必要なこと

これからのマーケティングに求められるアクション

――ここから少し大きなテーマになりますが、これから先、企業がマーケティングで取り組んでいくべきは、どんなアクションだと思いますか?お二人の考えを聞かせてください。

中島:ブランド軸でお話しすると、この先も変化が加速してトレンドの予測が困難な状況が続くことが予想できます。

 だからこそ、改めて自分たちがこれまで何をやってきたのか、今何をすべきなのか、ブランドの軸となる「PURPOSE(存在意義)」をしっかり決めることが重要だと思っているんです。

――確かに、MarkeZineでもここ数年でパーパスという言葉を取り上げる機会が増えています。辻さんは、どう思われますか?

辻:少し概念的な話をすると、ブランドが生活者に選ばれるかどうかは恋愛に近いと思っています。大きく分けて、「販促」「世界観」「スタンス」の3つの要素が関わってきます。

 「世界観」はどんなビジュアルやファッションで、どういう佇まいをしている人なのか。「スタンス」は、どんな思想を持っていて、社会に対するスタンスや言葉選びがどうなのか。

 「販促」は言うなればマッチングアプリや合コン、友人の紹介みたいなもので、出会う接点を作っていく役割だと考えてください。

 日本の場合、3つのうち販促を注視していくケースが多いのですが、いくらそこに力を注いでも、自分の思考や主張のすり合わせができなければ良い関係にはなれません。

 どれが欠けてもダメですが、特に社会に対するスタンスは都度提示しないといけない部分。これが言い換えるとパーパスなのではないでしょうか。

 なので、私が思うに日本企業はプロモーション的な考え方を、もう少し世界観やスタンスを伝えるブランドコミュニケーションに寄せるべきだと思っているんです。

 具体的には、一方向・マス依存・商品訴求メインの販促から、相互方向・UGC体質・ブランドメインのコミュニケーションを実行するのが大事だと考えています。

パーパスの設定に役立つフレームワーク

辻:世界観はデザインやクリエイティブで実現しやすい。販促は既に実践している。でもスタンスは……? というブランドが日本企業の場合多いのではないかと感じています。なので、スタンスやパーパスをどう見つけていけばいいのかと思う方に向けて一つ役立つフレームワークをご紹介できればと思います。

 

辻:1つ目の「ブランドのアイデンティティ」は、過去の集積です。これまでブランドが何をしてきたのか、を言葉にしてみましょう。マトメージュであれば、ヘアスタイリング剤でありスティックワックス。さらには、まとめ髪を作るプロダクトであり、“かわいい”を届けてきたブランドとも言えます。

 2つ目の「ブランドの意思/メッセージ」は、ブランドアイデンティティと逆で、ブランドが未来でどんな世界を実現したいのか。今現時点ではできていなくても大丈夫です。

 たとえば、マトメージュならば、誰もが自由に好きな自分を演出して、自分を愛することのできる社会を作りたい。現時点では、ブランドも若年層女性を中心に選ばれる商材ですし、社会も年齢や性別など様々な理由で自己表現を阻んできたり、自分を愛することが “ナルシスト”と言われ否定されたりする空気があります。未来のユーザーがそんな抑圧から自由になるために、どんなメッセージを発信するかが見えてきます。

 3つ目の「社会の潮流」は、過去・未来ときて“今”の話になります。自分たちの商材や業界を中心に、生活者の間でどういう課題が社会で話題になっていて、どういうツイートが伸びているのか。

 たとえば、脱毛業界では“コンプレックス訴求”が広告にあまりに多い、という指摘が近年話題になっていますし、美容業界でも「ルッキズム」という言葉が注目を集めています。トレンドだけでなく、生活者の声をブランドが受け止めていくと間接的に自分ゴト化できるので、ここをしっかり見ていくことも必要です。

 迷ったときにこの3つの項目を洗い出すことで、共通項やパーパスが見えたりするので、都度立ち返ってみています。

パーパスを持つブランドが強い時代に

中島:パーパスを打ち立てる上で、これまでのマトメージュが果たしてきた役割を振り返りました。人が髪をまとめる行為は、“自己表現の場”であり、それ自体が活力をもたらすものと捉えられます。

 そうした場を作ってきたマトメージュとして、改めて設定したパーパスが、「自由な自己表現を通して、あなたらしく、前向きでいられる毎日をサポートする」です。

 慈善事業ではないのでビジネスに還元していかないといけませんが、今後パーパスを通じて辻さんと仕事をしていくにあたっては、そうした自己表現を制約、阻害する要因を取り除いて自由に楽しめる人を一人でも多く増やしていきたい。それが結果的に、マトメージュを提供できるような人を増やすサイクルを生み出していくだろうと考えて設定しました。

――お話を聞き、辻さんが説明してくれたフレームに当てはめて、自分たちのブランドアイデンティティと、ブランドとして伝えたいメッセージ、社会の潮流をミックスできたことが、単純なプロモーションにとどまらず売上に直結する施策になった理由のように感じました。

辻:ブランドのことを考えようとすると、ブランドアイデンティティに引っ張られがちになります。設定したパーパスに誤りや優劣はないですが、中長期で見たときに、短絡的でない、社会に向けたパーパスが設定できるブランドが強いというのは今回の取り組みからも実感したこと。社会に向けてアプローチするとなると、間接的に思えるのですが、結果的に良い接点が作れて巻き込める人が増える方法なのではないでしょうか。

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この記事の著者

畑中 杏樹(ハタナカ アズキ)

フリーランスライター。広告・マーケティング系出版社の雑誌編集を経てフリーランスに。デジタルマーケティング、広告宣伝、SP分野を中心にWebや雑誌で執筆中。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2021/12/28 08:30 https://markezine.jp/article/detail/37925

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