アンケート調査から見えてきた、消費者と企業の認識のズレ
高橋:続いて、プライバシー問題に対する消費者や企業の実態も見ていきたいと思います。経産省では、「プライバシーガバナンスに関するアンケート」を実施されたそうですね。
小松原:はい。現在公開されているのは速報値ですが、回答を見ると、消費者の73.6%が「プライバシー保護に関して高い関心がある」、88.5%が「類似商品を選択するときに、企業のプライバシーへの取り組みを考慮している」という結果が出ました。私たちが思っていたよりも、意識されていると感じます。

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これに対して、「プライバシーへの取り組みを発信することで、少なからず消費者の消費行動に影響を与えることができる」と答えた企業は、58.7%です。消費者と企業の間に、プライバシー問題に対する認識のズレが見られています。回答者は限られていますが、しっかりと受け止めるべき結果だと思いました。
高橋:消費者の年代別の回答を見ますと、「類似商品選択のときに企業のプライバシーへの取り組みを考慮するか」について、29才以下の若者層の「非常に考慮する」の回答比率が高く、プライバシーに関する感度の高さがうかがえますね。
小松原:そうですね。さらに消費者の70.4%が、「金銭的利益やポイントの有無に関わらず、個人に関する情報の提供に慎重である」と回答されています。「個人情報の取得時に、インセンティブとしてクーポンなどを提供すれば良いのではないか」という発想は望まれていない、その一端が見えたような気がしました。
個人情報を取得するときは、利用目的に合わせて、必要最低限のデータに留めてサービスを提供することが本来の形であると思います。可能な限り情報を取得し、後から用途を考えるというケースも耳にしますが、サービスの中長期的な成長やグローバル展開を見据えるのであれば、プライバシーガバナンスを機能させた取り組みが必要であると考えます。
企業の実益にともなう形で、ガイドブックの更新を継続
高橋:終わりに、今後の展開をお聞かせください。ガイドブックは、プライバシー問題を取りまく環境や時代にあわせて、更新されていくとうかがいました。
小松原:先のアンケートで消費者コミュニケーションの状況を聞いたところ、実施すれば一定数の消費者が好意的に評価するにもかかわらず、企業が着手できていない取り組みが多数あることが見えてきました。たとえば、自社の取り組みの継続的な見直しや、自社の取り組みの定期的な公表などが挙げられます。

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また、ガイドブックについても尋ねたところ、存在は、65.3%が「知っている」が、ガイドブックの内容に関しては72.9%が「知らない」という回答でした。企業の実益にともなったガイドブックに育てていくためにも、普及および内容の充実に引き続き取り組みたいです。
野村:新しい技術は日々登場し、「どうやってデータを扱うか」と事業者の方々がお困りになるシーンも増えていると思います。これまで私たちは商用目的でカメラ画像を利活用するにあたり必要な配慮事項のポイントを写真やイラストを盛り込んだ具体例を通して解説している「カメラ画像利活用ガイドブック」を策定しご案内していますが、加えて「プライバシーガバナンスガイドブック」は、プライバシーへの対応を促進することで、消費者と企業の関係を良好なものとし、プライバシーに配慮したイノベーションが後押しされ、経済活動の活性化につながると考えております。
高橋:本日はありがとうございました。