キーワード4:「ジェンダーレス消費」
ここ1~2年でよく聞くようになったジェンダーレスという言葉。消費に関する話題でも、消費者インタビューをしていて、少しずつ耳にするようになってきました。
たとえばZ世代を対象にファッションのインタビューをすると、GUやユニクロ、無印良品などでは、男女で売り場の境がなくなってきていて、「男性用・女性用など、性別を気にせず衣類を購入することがある」という声をよく聞きます(図表5)。

またY世代からも「恋人・夫婦で同じ服をシェアしている」という発言が挙がることが増えてきました。
近年のトレンドとして、身体にフィットする洋服が主流ではなくなり、「男女どちらが着てもなじむようなゆとりのあるシンプルなデザインを好む」人が増えていることも背景としてありますが、性別を気にしない、誰のためのものかを気にしない消費者が増えている印象です。
美容面においても、Z世代の男性はスキンケアが当たり前になってきており、BBクリームで肌をきれいに見せる商品を使っている人も見られるようになりました。Z世代男性の意識を調査すると、男性の肌に良さそうな男性用を選ぶ人ももちろんいますが、男性・女性どちらが使っても大丈夫そうな商品を選ぶ人が多く見られるようになってきています。また、色や成分、形が性別に依存しない商品を選択するなど、近年「性別を特に気にせずモノを選ぶ」意識がスタンダードになってきている印象を受けます。なぜこうしたトレンドが起きているのか。背景を探っていくと「学校で習ったから」という声が出てきました。
SDGsを体系的に学ぶ、Z世代の価値観
調べたところ、2017年からSDGs推進が学習指導要領に盛り込まれていることがわかりました。今のZ世代はSDGsを学校で学習する機会が増えたことから「多様な価値観を肯定して受け入れることが当たり前」だという意識を自然に持っています。もちろん学校で習ったからというのがすべての理由ではないと思いますが、Z世代にとって「多様性」は当たり前の意識になっており、体系的に学習していないY/X世代とは異なる価値観が醸成されています。
そのため、たとえば広告に対する反応も、世代でかなり意見が割れる傾向が見られます。Z世代は性別、国籍、体型を問わず誰が使ってもいいと受け取れるものを肯定的に捉える姿が見受けられます。
共通見解として「多様性を受け入れよう」という考えがあるため、多様性を否定するものは自分たちの価値観と違うなと感じるようです。根底にあるのは「自分が好きだから選ぶ」「自分にフィットするから選ぶ」という気持ちです。決して、「ジェンダー」など社会問題として捉えているわけではなく、「みんな自分が好きなものを選べば良い」と自然に思っているため、企業からの誰が使ってもいいというメッセージに共感するのです。
2022年は、商品開発やマーケティングにおいて、女性向け、男性向けという視点を外して設計をする必要が出てくるのではないでしょうか。