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なぜマリトッツォは注目されたのか?スイーツブームの構造を識者に聞いた


 昨年、大ブームを巻き起こしたマリトッツォ。数年前はタピオカやパンケーキなどがブームになったが、スイーツ界は定期的にヒット商品が誕生している。味や見た目から自然発生的にブームに発展したケースも往々にしてあるだろう。ただ、食品メーカーやコンビニ各社といった企業が、戦略を練ってブームに持ち上げた側面も強いのではないか。マーケティングに精通している相模女子大学の金森剛教授に、スイーツブームの実態を聞いた。

スイーツブームは“たまたま”?

——2021年のヒットスイーツ「マリトッツォ」。気づけばあらゆるところで見かけるようになりましたが、ブームのきっかけは何だったのでしょうか?

金森:「マリトッツォ」という検索ワードは2021年1月から徐々に右肩上がりを見せ、6月にピークを迎えています。2021年初旬から注目を集めたきっかけは、福岡県にあるパン屋・アマムダコタンの影響が大きいのではないでしょうか。同店はコロナ禍に店を盛り上げるため、お昼時だけではなく14~15時の“おやつ時間”の集客を目的とした商品としてマリトッツォを販売しました。その後、その見た目のインパクトに加えて、“イタリアの伝統的なお菓子”という文化的背景も重なり、徐々に注目を集めるようになり、コンビニ各社でも続々マリトッツォを販売してブーム化しました。

 ただ、後述しますが、スイーツのブーム化は規則性が読めません。ハッキリとした“マリトッツォブームの発信源”は不明です。

相模女子大学 社会起業研究科(専門職)・社会マネジメント学科 教授 金森剛氏
専門分野は経営戦略、マーケティング管理、消費者行動分析。24年間のコンサルティング経験から、実務に即した授業を得意とする。産学連携プロジェクトを活用して、地域の特産品を使ったお菓子の商品開発なども行っている。

——パンケーキ、タピオカ、マリトッツォなど、スイーツ界では定期的にヒット商品が生まれています。ブームが起こりやすいスイーツの傾向やパターンはあるのでしょうか?

金森:正直何とも言えません。過去に学生と一緒に甘納豆の商品開発に携わった際、消費者調査を実施したことがあります。その時、「なかなかスイーツは難しいな」と痛感しました。というのも、私は以前、医薬品のような“ちゃんと頭で考えてから購入する商品”のマーケティング戦略を担ったことがあります。医薬品だけでなく、自動車やスマホといったものは効用や性能が高ければ消費者に選ばれやすい。

 しかし、スイーツやアパレルといった商品において、重視されるのは効用や性能ではなくセンスです。「○○は味も見た目も悪くないから好まれるだろう」といった企業努力も、「□□がブームになったなら△△もいけるだろう」といった予想も裏切られることが珍しくなく、残念ながら傾向やパターンは明言できません。

大切なのは“ブームの兆し”を素早く捉えること

——スイーツブームに規則性はないということでしょうか?

金森:そう考えても良いです。ただ、ブームのキッカケは自然発生的に生じます。その“ブームの兆し”を食品メーカーやコンビニ各社が上手く汲み取り、テーマ化した後に商品化してブームにつなげる、というケースは少なくありません。0が1になった瞬間に反応する嗅覚の鋭さやフットワークの軽さは、食品メーカーやコンビニ各社には必須です。

——“0が1になった瞬間”はどのように捉えることができるのでしょうか?

金森:コンビニ各社や食品メーカーでは、基本的には食べ歩きのようなオフラインでの市場調査を行いながら、客層の把握や街の観察などを進めます。加えて、近年ではインフルエンサーを複数人ピックアップして、その動向を探ることも重要です。多角的に情報を蓄えたうえで、観察対象のインフルエンサー何人かが特定のスイーツを取り上げ始めたタイミングに仮説立てや検証を進める。仮説・検証のプロセスを省き、0から1になった瞬間に直ちに行動すると、そのスイーツを販売しても箸にも棒にもひっかからないリスクがあるので注意です。

——仮説・検証のプロセスについて詳しく伺えますか?

金森:まずは「誰が」「どのシーンで」「どんな目的で購入して使用するか」という仮説を立て、その仮説検証のための調査を実施します。仮説検証の結果、商品コンセプトが明確化でき、ある程度ニーズの“普遍性”が見えてくれば、各社の商品開発プロセスに沿ってローンチを目指します。

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この記事の著者

望月 悠木(モチヅキ ユウキ)

フリーライター。主に政治経済、社会問題に関する記事の執筆を手がける。今、知るべき情報を多くの人に届けるため、日々活動を続けている。Twitter:@mochizukiyuuki

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2022/04/21 11:15 https://markezine.jp/article/detail/38425

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