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事業成長の壁を超える、顧客戦略(WHO&WHAT)とカスタマーダイナミクス:西口一希氏講演レポート

聴講者を交えた質疑応答

 質疑応答では、N1インタビューや顧客戦略の自社への導入について、聴講者からの悩みが寄せられた。以下ではその一部を紹介する。

【質問1】顧客インタビューの際、ストレートに「どうしたらいいか」と聞いても答えは出てきません。聴取方法などに工夫があれば教えてほしいです。

 聞き方よりも「解を見つける」という目的意識が大事です。たとえば離反顧客のインタビューでは、自社商品のどんな便益と独自性を提案すればこの顧客が戻ってくれるかを、インタビューの終わりまでに必ず見つけるという意識を持つようにします。ですから聞き出す内容はすべて手段です。話を聞きながら提案を考え続け、それを会話の途中で軽く当てて、反応があればそれが答えになります。顧客は答えを持っていません。こちらが提案しない限り、反応はないのです。これがN1インタビューにおいて重要なことです。反応してもらえずインタビューが終わってしまうと、失敗です。1~2回では難しいかもしれません。マジックナンバーは「20」です。20人の話を聞くと何かが見えてきます。繰り返す中で、自分の仮説設定能力を上げていきましょう。

 なお、インタビューのプロに調査をお願いするケースもありますが、私は基本的には事業主自身がインタビューをすべきだと思っています。プロダクトの機能、特徴、トリビア、歴史、開発秘話を知り尽くし、あらゆる可能性を考慮して顧客に提案できる能力は事業主が一番高いからです。

【質問2】上司に顧客心理を語る上で、数字での表現が必要になると思います。どんな調査を行って説得すると効果的でしょうか?

 定量調査やテストマーケット、コンセプトテスト、A/Bテストなど、顧客インタビューの録画を見てもらうなど手法はいろいろありますが、上司と向き合った会話は絶対勝てないのでやめた方がいいです。向き合うと意見のぶつけ合いなので、そこには顧客がいません。ぜひ9segsやカスタマーダイナミクスの表を持っていって、上司に問いかけてみてください。同じものを見て一緒に考えるのは、巻き込む方法としてお勧めです。

【質問3】ニッチビジネスなので、定期的な定量調査ではフレッシュサンプルが確保できず、セグメント分けした顧客の動態把握は難しい状態です。どう対応すればよいでしょうか。

 ニッチビジネスに対していきなり定量調査をするのはお勧めできません。顧客が少ないのは逆にアドバンテージです。その少ない顧客にインタビューをすればいいのです。ニーズを持った特定の顧客が自社商品の便益と独自性を評価して買い続けていてくれる。現在は10人でも、その10人が気に入って価値を感じてくれている便益と独自性の組み合わせが明確にわかれば、ほとんどのビジネスの場合、同じものを評価する人がマーケットには多数いてスケールできます。それから5segs、9segsで分解すればいいのです。まずは今成立している顧客戦略を見つけることからはじめましょう。

【質問4】ロイヤル層の中の潜在的な離反顧客の離反を事前に回避することは非常に重要だと思います。その兆候はどのようにキャッチしたらよいでしょうか。

 オフィスでパソコンの数字を見て顧客を理解したつもりになっているのが、根本的な問題です。数字で見ているとどこか操作できるような気持ちになりますし、操作しようとするから距離ができてしまう。相手が誰かわからないので結局理解が深まりません。まずは顧客に会い、話を聞きましょう。

 お勧めは、1~2年継続購入し続けているロイヤル顧客と、その次に離反した人を見つけてインタビューすることです。この離反顧客はいったんはロイヤル顧客になってくださったので、何らかの便益と独自性を期待していたはずです。何処で差が生まれたのか、それが一体なんであったか。そして自社商品がなぜそこからずれてしまったのかもインタビューを通じて見つけられます。Zoomでもよいので、とにかく顧客から直接お話を聞く機会を持つことがとても重要です。

西口氏のマーケティング・フレームワークをもっと学びたい方に

書籍

たった一人の分析から事業は成長する 実践 顧客起点マーケティング』(翔泳社)

アフターコロナのマーケティング戦略 最重要ポイント40』(足立光氏と共著/ダイヤモンド社)

マンガでわかる新しいマーケティング 一人の顧客分析からアイデアをつくる方法』(池田書店)

Web連載(2021年)

日経ビジネス連載「顧客起点の経営改革」

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この記事の著者

那波 りよ(ナナミ リヨ)

フリーライター。塾講師・実務翻訳家・広告代理店勤務を経てフリーランスに。 取材・インタビュー記事を中心に関西で活動中。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2023/04/21 11:11 https://markezine.jp/article/detail/38539

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