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プロトタイピングとソーシャルリスニングのプロフェッショナル
MarkeZine編集部(以下、MZ):前回の記事では「脳科学×SNSコミュニケーション」というテーマで、IMJと檀教授にお話を伺いました。今回はソーシャルリスニングに強みを持つIMJと、プロトタイピングの研究家である三冨さんに「SNSユーザーのインサイト把握」というテーマでお話を伺って参ります。まずは三冨さんとIMJ、それぞれの専門領域について詳しくお聞かせください。
三冨:大学院の研究員としてプロトタイピングの研究を行いながら、プロトタイピング専門の会社であるS&D Prototypingにおいて、民間企業の支援を行っています。
三冨:プロトタイピングとは、端的にいうと「ものをつくったり、体験を通じて仮説を検証したりするプロセス」です。たとえば、ソフトウェア業界で用いられるワイヤーフレームを基に、ユーザビリティを検証する行為もプロトタイピングになります。
三冨:プロトタイピングを実践する際には「早く・安く・何度も・並行して」試すことが重要です。しっかりと作り込んでからアウトプットするのではなく、早めにアウトプットすることで失敗を先取りし、大きな失敗を避けることができます。たとえば、先ほどのソフトウェアにおけるプロトタイピングでも、パワーポイントなどのプレゼンテーションツールでプロトタイプをつくるのではなく、紙で複数コンセプトを並行して検証することにより、どれがどのような理由でうまくいかないのかを早く・広く知ることが可能です。
最近はマーケティング領域においてもプロトタイピングの有用性が示されており、とりわけユーザーのインサイトを捉える際に有効な手法といえます。たとえばキャンペーンをクイックに作って公開し、ユーザーの反応を受けて修正するサイクルを短期間に何度も繰り返すと「ユーザーに何が響くのか」を理解できるようになるのです。じっさい、Webキャンペーンに関するお引き合いは増えています。
IMJ:弊社は創業から25年間、企業のデジタルマーケティングを支援してきました。2021年にアクセンチュアと合併したことで、デジタルの上流から下流まで総合的な支援が可能な体制を築いています。
IMJ:私が担当しているSNSマーケティングの領域では、ユーザーの反応を取り入れながら施策の分析・改善を行っています。SNSではユーザーのインサイトが目まぐるしく変化するため、反応を常に注視しながらPDCAを回していくことが不可欠なのです。
ビジネス上のペルソナとSNS上のペルソナは一致しない
MZ:ソーシャルメディアプランナーのお立場から、昨今のSNSに見られる特徴や企業のマーケティング課題について詳しく伺えますか。
IMJ:SNS上のユーザーインサイトを捉えるためのキーワードとして「個の多様化」が挙げられるでしょう。アルゴリズムによって各人に合った投稿が表示されるSNSでは、趣味嗜好に没入しやすく、似た趣味のユーザー同士が横のつながりを持ってコミュニティを形成することもあります。このような動きの中で、SNS特有のインサイトやペルソナが生まれているのです。
自社のビジネス目標を踏まえたペルソナを精緻に描くことが得意なマーケターは多いと思います。しかしながら、自社が理想とするペルソナをSNSコミュニケーション用にチューニングした方が、施策を広い範囲に届けることができるのです。弊社が支援しているクライアントからは「SNS上でペルソナをどのように設定し、アプローチすれば良いかわからない」という悩みが寄せられています。
勘所を押さえたプロの手でソーシャルリスニングの切り口を定める
MZ:IMJでは、どのようにしてSNS上のペルソナ設定を支援されているのでしょうか。
IMJ:弊社が得意としているのはソーシャルリスニングです。まずはツールを使い、その業界や製品に関するユーザーの声をラフに検索します。次に、検索した声の中からボリュームゾーンを探り、さらに細かく分析。ツール上でもネガティブ/ポジティブな声を大まかに捉え、簡単なワードマップを自動生成することはできますが、重要なのはどの検索ワードや切り口でソーシャルリスニングを行うかという点です。この点は自動化が難しく、勘所を押さえたプランナーが複数在籍する弊社の得意領域だと考えています。
IMJ:SNSの投稿に対してどのような人がリアクションしているのかをウォッチしながら、都度ペルソナやインサイトを改善していく方法もあります。どんどん変わっていくユーザーのインサイトを捉えてペルソナを精緻化していくためには、こうしたアジャイル的なアプローチが大切です。
PDCAの高速化に有効なプロトタイピング
MZ:アジャイル的なアプローチといえば、プロトタイピングにも通ずる要素だと思います。SNSマーケティングにおいて、プロトタイピングはどのような価値を発揮するのでしょうか。
三冨:プロトタイピングのコンセプトである「早く・安く・何度も・並行して」の中でも、とりわけ「早く」「並行して」という部分がSNSマーケティングには効果的だと考えています。「早く」だけでは漠然としてしまうので、プロトタイピングにおいてはアウトプットのタイミングを決めておくことが重要です。たとえば「2日に1回投稿してみましょう」と決めて実行し、その結果をすぐに振り返って検証する。2日に1回では少ないと判断したら、1日1回に調整してユーザーの反応を見て、またすぐに振り返って検証。そのプロセスをひたすら繰り返します。
SNS上で特定のペルソナに向けた施策を実行する際も、複数の仮説を並行して検証していくと高い効果が出るのではないかと考えています。参考資料として、カリフォルニア大学サンディエゴ校准教授のSteven Dow博士らが行った実験の結果をご紹介しましょう。その実験では、複数種類のバナーを並行してユーザーに表示し、効果の高いクリエイティブを絞るパターンと、1つのバナーをユーザーに表示してクリエイティブの改善を重ねるパターンを比較しました。その結果、バナーのCTRが向上したのは前者のパターンでした。つまり、並行して試すことでユーザーのインサイトをより精緻に捉えられるというわけです。
ポイントは、これがABテストではないことです。どちらが良いのかを量的に検証することが目的ではなく、並行して試すことにより「どれがなぜよかったのか」という学習を得ることが重要なのです。その結果、まったく新しいコンセプトが生まれることもあり得ます。
ソーシャルリスニング×プロトタイピングのシナジー
MZ:ソーシャルリスニングとプロトタイピング、それぞれの手法をお互いにどう評価されていますか。
IMJ:ユーザーのフィードバックをすぐに得られるという意味で、SNSはアジャイル性の高いメディアだと考えています。企業から一方的に発信してしまいがちですが、メディアの特性を活かし、適切な発信をユーザーに選んでもらうというプロトタイピングのアプローチは斬新ですよね。
三冨:私は「システムで自動化できない切り口を人間が定性的に設定する」というIMJさんの強みに納得しました。だからこそ精度の高いペルソナ設定ができるのだと思います。
MZ:ソーシャルリスニングとプロトタイピングを組み合わせた場合、具体的にどのような価値を生み出せるとお考えですか。
三冨:IMJさんが冒頭でおっしゃっていた通り、ユーザーのペルソナは多様化しています。1度設定したペルソナがずっと有効かというとそうではなく、継続的に変更していく必要があるのです。設定したペルソナに対して何の情報をどのような方法で届ければ最も反応が良くなるのかを検証するところに弊社の強みがあるので、ソーシャルリスニングとプロトタイピングの掛け合わせで価値を生み出せるのではないでしょうか。
IMJ:ソーシャルリスニングで見出したペルソナに対して具体的なアプローチを行うにあたり、変化の激しいユーザーインサイトを捉えながらPDCAを回すのにプロトタイピングは大変有効だと感じています。
プラットフォームに最適化したコミュニケーションを
MZ:最後に、お2人の展望をお聞かせください。
三冨:試しながら修正していくプロトタイピングのアプローチを広めることで、SNSマーケティングのPDCA高速化に貢献していきたいです。弊社のケイパビリティはあくまでプロトタイピングなので、ペルソナの整理やコミュニケーション戦略の策定にスキルをお持ちのIMJさんとうまく連携できればうれしいですね。
IMJ:私もS&D Prototypingさんとは何らかの形で連携できるといいなと思っています。IMJとしては、引き続きソーシャルリスニングでユーザーのインサイトを捉え、クライアントのSNSマーケティングを支援していきます。SNSでは、プラットフォームに最適化したコミュニケーションを行うことが重要です。「自社のSNSマーケティングを強化したい」とお考えの方には、我々の知見を活かしてお力になりたいと思っています。
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