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【ワークシート付】正攻法の“逆張り”でブランド体験を構築する新思考法「PJMメソッド」入門解説

【J:ジョブ】競合を増やし、収益源を増やすためのステップ

 ジョブの定義は、ハーバード・ビジネス・スクールのクレイトン・クリステンセン教授が提唱したジョブ理論をベースとする。ジョブ理論とは、消費者の欲求や気持ちの奥底に迫り、何の目的でお金を払うのかを基軸に消費行動のメカニズムを解き明かす理論だ。

 この理論をもとにジョブを定義すると、競合の軸が変化する。たとえば、食品に対するジョブの場合、「空腹を満たす」という生命維持のための生理的ジョブをはじめ、「その食品を提供している企業を応援する」といった社会的ジョブまでが考えられる。生理的ジョブの場合は同じ食品が競合となるが、健康維持を目的とした場合にはサプリメントやヘルスケア製品が競合になる。さらに、社会的ジョブを軸とした場合には、あらゆる製品やサービスが競合となる。

 ここで藤平氏は、「ジョブを捉えて理解するためには、自由な気持ちで語ってもらうことが重要」と説く。たとえば、「ぶっちゃけ〇〇です」という本音を聞き出し、その理由を深掘りしていくことで、企業が想定していなかったような理由でブランドが評価されていたり、スペックや機能の競争ではない領域でニーズがあったりすることは珍しくない。

 単一市場のシェアを獲得するというこれまでのアプローチではなく、同じ製品やサービスで複数のジョブを考えることで、競合する土壌を増やしていく。ジョブの見直し例として藤平氏が紹介したのは、ミレニアル世代やZ世代に人気の都内の美容院である。同美容院が「イメージチェンジをしたい」というジョブでベンチマークとしているのは、「ファッションウィッグ(おしゃれなカツラ)」なのだそうだ。

 「髪の色や髪型を頻繁に変えるミレニアル世代やZ世代にとって、“イメチェンの手段”は、美容院だけではありません。ファッションウィッグであれば、安価でかつ手軽にイメチェンできるわけです。実際にこの美容院は自分たちのジョブのフレームを見直し、現在はウィッグのプロデュースも実施しています。ジョブのフレームを見直すと、自分たちのアクションも変化してきます。既存のニーズとは違う切り口で世の中を見直すことが重要です」(藤平氏)

【M:モーメント】生活者の「待ってました!」の瞬間を捉える

 最後のモーメントは、生活者の気持ちに向き合うステップ。藤平氏はこれを「(生活者が)『待ってました!』と思う瞬間がいつなのかを知ることだ」と話す。そのためには、生活者の個人的な感情が揺れ動く瞬間と、ブランドを取り巻く社会情勢に目を配る必要がある

 では、どのようにして生活者の「待ってました!」の瞬間を捉えるのか? 藤平氏は、ひとつのアプローチとして、SNSの投稿を参考にする方法を紹介した。たとえば、InstagramやTwitterでの投稿、Amazonなどのレビューで、自社の製品やサービスがどのように取り上げられているかを確認していく。コツは、製品やサービス名単体で検索しないこと。気持ちや行動を表す単語(最高・最低/好き・嫌い/すごい・うざい/絶賛・幻滅など)のセカンドワードと一緒に検索をしていくと、気持ちの動きや瞬間が理解できる。

新規事業開発やDXにも。メソッドを+αで応用する方法

 PJMメソッドのワークステップを整理すると、下図のようになる。また、一連のワークで用いるシートも掲載する。

PJMメソッドの12のワークステップ
PJMメソッドの12のワークステップ
PJMメソッドで用いるワークシート。一連のステップをこの1枚のシートに落とし込む
PJMメソッドで用いるワークシート。一連のステップをこの1枚のシートに落とし込む
ワークシートの記入例
ワークシートの記入例

 「我々が行う時は1ヵ月、2ヵ月単位のプロジェクトとして、ブランドを見つめ直していきますが、そこまでハードに行わずとも、各ステップ10分ずつワークするだけで変わってくると思います。また、打ち合わせの前日や企画が行き詰った時に、何かしらのワークをやるだけで、新しいアイデアに繋がるかもしれません」(藤平氏)

 最後に、藤平氏はPJMメソッドに「T(テクノロジー)」と「B(ビジネスモデル)」を“強制的に”掛け合わせることで、「新しい事業のアイデアや発想と“強制的に”出合うことができる」とし、メソッドの広がりについても言及した。たとえば、AI(人工知能)やAR・VR(拡張現実・仮想現実)、NFT(非代替性トークン)、Fintechとブランドコンセプトを掛け算すると、テクノロジー起点の新しいアイデアが掛け合わせた分だけ“自動的に”できてくる。このように、PJMメソッドに掛け合わせる“相方”を持っておくと、コンセプトから顧客体験、新規事業まで落とし込むことができる。

 「マーケティングコミュニケーション領域はもちろんですが、正攻法で行き詰った新規事業開発やDXにも、PJMメソッドは用いることができます。そして、ここまで挙げてきたパーパスやジョブ、モーメントなどのキーワードを挙げてきましたが、最終的には『行動してなんぼ』だと思っています。存在意義と想像力を掛け合わせた『行動力のあるブランド』を増やしていく仕事を、聴いて下さっているみなさんと一緒にできれば嬉しいです」(藤平氏)

書籍の紹介

 PJMメソッドの詳細、ケーススタディは、藤平氏の著書『クリエイティブなマーケティング パーパスを起点に新しい顧客体験をつくるPJMメソッド』をご覧ください。

『クリエイティブなマーケティング パーパスを起点に新しい顧客体験をつくるPJMメソッド』
『クリエイティブなマーケティング パーパスを起点に新しい顧客体験をつくるPJMメソッド』
藤平達之(著)現代書林 1,870円(税込)

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この記事の著者

鈴木 恭子(スズキ キョウコ)

 東京都出身。週刊誌記者などを経て、2001年IDGジャパンに入社。「Windows Server World」「Computerworld」などの記者・編集を経て2013年にITジャーナリストとして独立。主な専門分野は組込系セキュリティ。現在はIT(Information Technology)とOT(Opera...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2022/04/06 08:00 https://markezine.jp/article/detail/38571

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