マスプロモーションとエントリーポイントへの投資を強化
──当初のミッションであった解約率の改善に成功しました。次はどのような戦略に舵を切っていくのでしょうか?
杉野:ユニットエコノミクスにおけるCAC(コスト)とLTV(顧客生涯価値)のバランスを見て、LTVが伸びてきたため、CACのほうにようやく投資できる段階になってきました。そこで本年からは、NewsPicksをより多くの人に知ってもらうためのマーケティングに、本腰を入れていきます。
具体的には、まずマスプロモーションへの投資を行います。デジタルではなくマス広告に注力していく理由としては、まずNewsPicksの認知率を上げていく必要があると考えたためです。少し古い調査データとなりますが、2年前にサービス認知率を調べた際、NewsPicksの認知率は39%ほどでした。この限られた層にデジタル広告を当てても、すぐに頭打ちになると思いますので、まずはマスプロモーションに注力していきます。
またもうひとつ、こちらは既に取り組みを開始していますが、「エントリーポイント」へのアプローチをより強化していきます。これまでも学割などは一応用意していたのですが、訴求にはあまり力を入れていませんでした。というのも、学生や20代前半といった若い世代の方は、当然課金などが少ないので、ROIが見合わないと判断していたのです。しかしこの3年間でLTVは伸びてきましたし、かつ期待LTVできちんと将来の数字も見えるようになったため、未来を見越して投資判断を行えるようになったのです。
エントリー層へのアプローチでは、「学生タブ」を追加したり、学生アンバサダーの「StudentPicker」という制度を始めたり、主に20代の学生から30代前半のビジネスパーソンの方々に向けて「JobPicks(ジョブピックス)」といった姉妹メディアを作ったりしています。
どんな戦略も「やりきること」が重要
──最後に、今後の展望をお聞かせいただけますか?
杉野:3年間様々な取り組みを行ってきたわけですが、一貫して大切にしていたのは「やりきること」です。コンサルティング時代によく経営者の方と事業ポートフォリオを作って議論することがあったのですが、ポートフォリオを作ると、上手くいっていない事業が浮き彫りになりますよね。そういった場合、「これは事業そのものがダメなのか?」「それとも、真剣に取り組んでいないから上手くいかないのか?」といった議論につながります。前者であれば撤退で良いのですが、後者であれば経営判断ができないか、間違えやすくなります。真剣にやれば利益拡大の可能性があるかもしれませんし、やっぱり事業そのものがダメな可能性もあります。
つまり、経営戦略において、正しい経営判断をするためには、ポートフォリオでマッピングする以前に、なによりも各事業や各施策を「きちんとやりきる」ことが最も重要なのです。そうしてはじめて、意味のある資源配分ができます。
そのため私自身も、経営戦略において重要だと判断した施策があれば、必ずやりきることを大切にしています。2022年は、先に挙げたマスプロモーションとエントリーポイントへのアプローチ、まずはこの2つに関して、オーナーシップを持ってきちんとやりきっていきたいと思います。
