「変化を起こす側」の立場で考え、インプットできているか?
──若手だと、言われたことをやるのに必死で、ビジネス結果への意識が弱かったり、どうしても目標数値だけを追いがちになってしまったりすると思います。そういうところに陥らないためにはどうするべきだと思われますか。
中村:デジタルマーケティング担当の方であれば、A/Bテストをするケースも多いでしょう。これを「言われたことだから」とやるのと、「自分なりに考えて」仮説を立ててやるのとでは同じテストの中からの学びの量が全然違いますよね。自分のコントロールできる範囲内でも、テスト環境を作って検証をしていくことが大事かなと思います。また、社内ミーティングや上司との1on1なども、仮説検証の機会であると考えることもできます。
──1on1が検証機会になるというのはどういうことでしょうか。
中村:たとえば、上司にキャリアをサポートしてもらいたいと考えたとします。これが求める結果です。結果を得るためには、相手がどういうモチベーションで動いているのか、自分との関係性を含めて考え、コミュニケーションプランを考えていく必要があります。これはもうマーケティングですよね。そう考えるとスキルアップのチャンスはいくらでもあります。
──いろいろな角度からインプットをされていますが、少し先を読んだり、変化を作ったりするために意識的にされていることはありますか。
中村:これも3つあります。1つは、少なくとも自分に関係あるエリアに関しては、「変化を起こす側」の立場で考えるようにしています。たとえば今、プライバシー問題とパーソナライズの共存をどう考えていくかが世界的な課題としてあります。そこに対して、Google社は今こんなふうに考えているらしい、ではMetaならどうするかと考えていくのです。
2つ目は、変化を読む上で個人的に学びになったことで、アカデミックの世界は5〜10年進んでいるということです。店頭の重要性やインフルエンサーなど含めた共創マーケティング、パーパス経営といったことも、5〜10年前にアカデミックで話されてから実務に落ちてきています。ビジネス現場に来るまでにタイムラグがあるので、アカデミック分野を意識しておくと今後のトレンドが見えてきたりします。
3つ目は、いろいろな世代との交流です。10歳以上離れた下の世代には、カジュアルに話をして何が今ホットなのかを聞くこともそうですし、Twitterでつぶやいたときに反応してくれるのも20〜30代が多いですね。20〜30代が「変化」に注目する一方で、50代以上の人と話すと、「それ、前にもあったよね」と現実に引き戻してくれます。この両側の人と話をすることでバランスを取ろうとしています。
キャリアのつくり方に画一的な正解はない。まずは自分の解像度を高めること
──ありがとうございます。最後に若手マーケターに贈る言葉として何かメッセージをお願いします。
中村:たとえば、今ESGやSDGsが流行っていますが、「あなたのキャリアゴールにESGやSDGsを入れてください」と言われたらどう感じますか?
少し気が引けてしまうのではないでしょうか。人によって価値観も経験も違うのに、画一的なゴールを示されると違和感を覚えるのは当然です。それなのに、「キャリアのつくり方」というと、多くの方が汎用的な答えを求めている気がしています。
そうではなくて、まずは自分の価値観や強み、どういう経験をしていきたいか、というところの解像度を上げることが一番大事だと思います。それを一人だけで考えるとどうしても「こういうものだ」という思考に凝り固まってしまうので、社内外のメンターをつけることをお勧めします。壁打ち相手を見つけることは結構大事です。
将来的にすごく伸びると思われる「ハイポテンシャル」な人に共通する要素が3つあります。1つが結果にこだわる「ビジネス結果思考」。次に常に学び続ける姿勢「ラーニングアジリティ」。最後が「エモーショナルインテリジェンス(EQ)」。この3つを意識しながら「自分は誰で」「自分はどんな存在なのか」を考え、メンターの意見をもらう。そうやっていくと、より自分への解像度が上がっていくと思います。