顧客中心のコミュニケーションは「感情のギャップ」がカギ
続いて美濃氏は、これからのコミュニケーション戦略について解説する。
そもそも、顧客は今どのようなコミュニケーションを求めているのだろうか。ここで重要になる変化が、「接点中心から顧客中心に変わっている」ということだ。接点をデジタル化してそこから得られるデータで顧客とつながるやり方から、顧客が利用する場所やサービスすべてとつながるやり方への変化が求められている。この変化を美濃氏は、「単なるデジタル化から、つながるためのデジタル化に変わる必要がある」と説明する。
そのためには、顧客を中心に体験をデザインすることが必要だ。そこでは、これまでの4P(Product、Price、Place、Promotion)のフレームワークから、Customer Value(顧客価値)、Cost(顧客の支払うコスト)、Convenience(顧客利便性)、Communication(顧客との関わり)の4Cに見方と思考を変えることが求められる、と美濃氏は言う。
4Cへのシフトについては、顧客体験、顧客接点、時間軸の3つから説明がされた。顧客体験は言うまでもなく、顧客体験をどうするのかがこれまで以上に重要な要素となっているということだ。顧客接点については、顧客体験が重視されることで顧客接点の質が問われるようになるということ。またAlways Engagedの状態を作るためにあらゆる顧客接点の活用が求められるということだ。
時間軸については、「“時間”が顧客体験の質を評価するための指標になった」という。タイミングが適切であるか、リアルタイム性があるかがより求められるようになってきているのだ。
体験のイメージとしては、初回接触から顧客化しその後も関わっていくために、様々なデバイスで顧客体験提供する。このように継続的で連鎖した体験において重要なポイントが「感情のギャップ」だという。
具体的には、顧客の期待値の上をいく何かを提供することだが、これを行うためにはデータが必要になる。感情のギャップを生むためには、「顧客のニーズに合った商品を提供できているか、顧客の望む接点でコミュニケーションができているか、タイミングが適切かなどの観点が必要」と美濃氏。そのためには、オンラインとオフライン、両方のデータを集めて分析することで顧客の姿を理解・把握し、期待値を見極めることが重要と話す。
オンラインとオフラインの融合とデータ
感情のギャップを生む顧客体験の提供で欠かせないのが、テクノロジーだ。
データには、CRMデータ、Webやアプリの行動データ、SNSなどから得られる行動データ、サードパーティCookieなどがあるが、CRMデータ以外は足跡のような形で顧客を推測するデータとなる。足跡を入手して顧客の“ヒトとナリ”を把握できるが、デジタルマーケティングでは「想像している以上に多くのデータを得ることができる」と美濃氏は述べる。例として、Webでは閲覧したページ、訪問回数、流入経路など、電子メールでは到達の有無、開封の有無、リンクのクリックなど、モバイルデバイス上のアプリでは、位置情報、センサーから得られるデータなども集めることができる。
データは、自社が収集した「ファーストパーティデータ」、パートナー企業を通じて得られた「セカンドパーティデータ」、そして第三者から得る「サードパーティデータ」の3つに分類できる。
このデータを、オンライン、オフラインの両方で収集する必要がある。「これまでオフラインデータは店舗での接客販売や人的営業の補完的な役割という位置付けだったが、オンラインとオフラインを融合して新しい顧客体験をどう生み出すかを考える必要がある」と美濃氏は述べる。