就活を起点にした、企業・ブランドのコミュニケーション事例
その時々の就活生イシューを捉えた企業の広告やPRは、SNS上でもエンゲージメントを集めやすく話題になりやすい傾向があります。ここ数年、P&Gのヘアケアブランド「パンテーン」が行っている広告PRは、就活生をはじめとした多くの人からエンゲージメントを集めています。
たとえば、就活ヘアや黒髪染めを強要される地毛証明書など、日本の同調圧力に対してブランドのメッセージを発信したところ、多くの共感を生みました。さらに2020年秋からは、LGBTQ+の方々の就活体験談をもとに、自分らしさを表現できる就職活動を考える「#PrideHair」というプロジェクトを実施。個性を尊重するブランドメッセージを浸透させています。
この事例のポイントは、イシューが顕在化しやすいテーマを深堀りし、自社のブランドが接着できる文脈を把握できていることです。SNS上で話題になり情報が広がることで、本来のターゲットユーザーにもリーチします。加えて、就活というライフイベントでブランドに好意を持ってもらうことで、将来のユーザー獲得にもつながっているのではないでしょうか。
またパナソニックは、noteを活用したユーザー巻き込み型のPRで注目を集めています。「#はたらくってなんだろう」「#この仕事を選んだわけ」など複数のテーマを設けて、ユーザー参加型のコンテストを実施しています。
SNS上の声では「いろんな働き方やキャリア観に触れることができてよかった」などのコメントがあり、就活生の興味関心文脈も捉えた企業PRとなっています。
就活の文脈と接着したブランドメッセージを
最後に、就活をきっかけに企業やブランドに興味を持ってもらう方法ですが、重要なのは就活というライフイベントに潜むインサイトをどれだけ解像度高く把握できるか? ということです。その時々で変化するターゲットのニーズや課題、企業やブランドを取り巻く環境での文脈を捉え、ブランドメッセージを接着できるか考えることが大切です。
また、文脈は単に話題になっている事柄だけでなく、それがどのような語り口やニュアンスで扱われているのか、一段掘り下げて捉えなければなりません。特にSNSでは企業よがりな発信ではスルーされることが多く、日常に溶け込むビジュアルや訴求の仕方を模索することも必要となります。
採用活動のオンラインシフトは加速しており、働き方やキャリア観の多様化も相まって、就活イシューはさらに変化していきます。現時点で採用・就職活動と接点のない生活者にとっても地続きのテーマであることは明らかですし、普段の企業・ブランドの活動が就活生にも影響を与えることが今回の記事で明らかになりました。
この記事が、企業・ブランドのマーケティングに携わる読者の皆さんにとって、就活という文脈を活かしたマーケティングの一助となれば幸いです。