変化(3)人材採用ニーズの増加と教育の課題
最後の変化は人材採用ニーズの増加である。多くの飲食店が採用を絞らざるを得ず、既存のスタッフについても離れてしまっている店舗がほとんどであった。そんな中、社会的な風潮として徐々に外食ニーズが復活したことで、人手不足が深刻となった。
カフェ店舗を経営するA社では、売上がコロナにより減少していた中で広告にかける予算が捻出できず、大手求人サイトの利用を停止し、無料での利用できるSNS媒体へのシフトを行っていた。具体的にはInstagramでの求人募集を行った。大手媒体の魅力はリーチできる対象の圧倒的な母数だが、逆にSNSのメリットは通勤圏内の近隣の方にフォローされていることで、母数は稼げないが的確な人にリーチしやすいという点である。
SNSのほかにはリファラル採用など、できる限りコストがかからない求人施策を懸命に行っているという。
問題は採用だけではない。今までいたスタッフがコロナ期間に離れてしまったことで、教育をできるスタッフがおらず、接客のレベルにもばらつきが出ているという。かといって大型の店舗ではないため、マニュアルブックもなく、経験豊富なマネージャーがOJTで教育を行っている状況だ。そして急いで採った人材は、辞めるのも早い傾向があるという。スタッフの採用、教育、つなぎとめ、いずれも飲食店の大きな課題であり、それらを解決するソリューションにはニーズがある可能性が感じられた。
以上、飲食業界の当事者の方々にインタビューを行わせていただいたが、困難な状況を乗り越えるために各々ができる限りの工夫をしていた。そんな中でも急激な変化に対応しきれていない部分も多く、新たに生まれた課題に着目したサービスが今後現れてくるのではないかと感じている。本記事が何か重要な示唆を与えることができていれば幸いだ。
次回はコロナ禍の影響が大きかったもう1つの業界である、「旅行業界」について起こっている変化を探っていくこととする。
