「5秒でわかる」を合言葉にリニューアル。そのビフォーアフターは?
続いて小川氏はパッケージ制作の様子を紹介した。その一つがチルド総菜のコーナーだ。
「たとえば都心部のような面積が狭い店舗で限られた棚スペースに商品が並んでいるところでは、パッケージの上部に記載されている商品名が見えないという課題を発見しました。そのため、商品名を下に記載するレイアウトでモックを作成して、実際の棚での解決方法を検証しました」(小川氏)

またポテトチップスは、商品写真が似通っている上、従来は背景色を白で統一していたため、遠目だと何味なのかがわからないという課題があった。そこで、味によって背景色を変更。顧客にとってわかりやすくなった上に、店舗スタッフも商品名を読まなくても色別に陳列できるようになった。

柘植氏はリニューアルの過程を振り返り、特に重視していたポイントを次のように語った。
「お客様にとってわかりやすいというのが最大のポイントだったので、小川さんにはその点を最優先に、デザインをしていただきました。ブランド全体の考え方はぶれないように常に意識をしつつ、カテゴリーによって陳列する棚も特性も違うので、お客様の視点を重視して、臨機応変に対応していただきました」(柘植氏)
一方の小川氏も、次のように語る。
「お客様が売り場で見た瞬間に商品の良さをわかっていただけるよう、『5秒でわかるパッケージ』を合言葉に制作を進めました。商品ごとに容器の形も大きさも違いますが、ブランドとしての統一感を持たせることができるよう、本当に1個ずつオーダーメイドで作っていったような感覚です」(小川氏)

こうして、おむすびやお弁当をはじめ、お菓子、惣菜、調味料、ペットボトル飲料、日用品にいたるまで、カテゴリーを横断して多数の商品があるファミマルのデザインが仕上がっていった。

インナーブランディングとしても機能したプロモーション
ファミマルのローンチのタイミングでは、店舗からテレビCMまで連動したプロモーションを行った。これらも顧客目線でメッセージを出し分けた。
「店舗における販促物の場合は、お客様にプライベートブランドの商品を手に取っていただくことが第一の目標になります。そのため店舗の外では『ファミマル』という言葉が目に入ることを最優先にしました。店内は個別の商品をしっかりと見せることを意識してデザインし、ハンバーグなど主力商品のおいしさを直接的に示していくコミュニケーションを行いました」(小川氏)
一方、TVCM、新聞広告、屋外広告では、商品の細かな話はせず、ファミマルという新ブランドが誕生したことをニュースにした。たとえば、10月19日のローンチに先立ち、10月18日付の読売新聞朝刊には「負けていたのは、イメージでした。」のコピーで全15段広告を出稿。東京・渋谷駅には「そろそろ、No.1を入れ替えよう。」という交通広告を出した。
「新聞広告も渋谷の広告も、おいしさには自信がある、お客様一人ひとりにとって、一番になれるような商品をしっかりとお届けしています、という姿勢の表明として出させていただきました。実はあのメッセージは、お客様だけでなく、社内にもその思いを届けるインナーブランディングとしても効果を発揮しました。ファミリーマートの商品作りの姿勢を示したことで、関わるすべての人がお客様にとってのNo.1ブランドを本気で目指していく、という機運が高まったのではないかと思います」(柘植氏)
では、このファミマルとともにファミリーマートは今度、どのように“No.1ブランド”を目指すのか。セッションの後半では、中長期の展望が語られた。