体験が起点となりブランドスイッチ サンプリング業界の概要を解説
「今日は『サンプリング2.0』について、企業のマーケティングや広報の担当者様、代理店の方にとって有益なお話ができればと考えています」
そう話すのは朝日放送グループで、番組販売、ライセンス事業、プロモーション事業などを行っているABCフロンティアの梶原氏だ。梶原氏はまず、個人的なエピソードをもとにブランドスイッチの体験を紹介した。
「たとえば我が家でいつも飲んでいる『こだわり酒場のレモンサワー』。以前は別のブランドを買っていましたが、友人からもらって飲んだことをきっかけに買うようになったんです。花王の洗濯用洗剤『アタックZERO』も、ユニクロで服を買った際にサンプリングでいただいたものを使ってから、買うようになりました」
これらのケースに共通するのは、体験がブランドスイッチのきっかけとなったということだ。同様のケースは他の分野でもあるのではないかと考え、調査を行ったという。
セッションで紹介されたのは、GMOリサーチによる成人460人へのアンケートだ。シャンプー、アルコール飲料、化粧品の3つのカテゴリーについて「何がきっかけで今使っているブランドの商品を買い始めたのか」を質問したアンケートでは、ブランドスイッチのきっかけとしてはいすれもテレビCMが多く、サンプリングはテレビCMの1/6~1/2という結果だった。ここまでのデータを見るとテレビCMの強さを感じるが、続くデータを見ると印象はガラリと変わることとなる。
「我々はこれらのデータに加え、テレビなどの広告市場とサンプリング市場の規模を調査しました。結果、サンプリング市場はテレビ広告市場に比べ1/180以下しかなく、サンプリング施策の費用対効果はテレビCM施策に比べ圧倒的に高いとわかったのです」
場所・グループ・ターゲット……サンプリング施策で注意すべきポイントとは?
様々なデータを組み合わせ、費用対効果が非常に高いことが判明したサンプリング。実践方法については、いくつかの種類が存在するという。
まずは特定の場所での配布。街頭や交通機関、商業施設、映画館や病院、小売店、イベントなどが一般的だ。またサークルや会社、PTAといったグループ単位での配布も可能。
さらには、特定の商品を買った顧客に配布する方法も存在する。この方法は店頭での配布に限らず、データベースから競合商品を買ったユーザーに送付してもらうといったアプローチも採れる。
どの方法が良いのかは商品ごとに異なるが、梶原氏によると、ある程度のセオリーが存在するという。
「施設でサンプリングを行う際には、商品のターゲットと施設のユーザーがマッチしていることが大切です。また使用までのリードタイムも重要となってきます。たとえば、街頭でシャンプーのサンプリングをした場合。せっかく配っても、なかなかすぐには使っていただけません。受け取っていただいた方にいつ使いますかと聞くと『次の旅行や出張の時に』という回答が返ってきます。
配布してから使用までのリードタイムが長いと、使用率も落ちますし、使用されても効果が現れるまでに時間がかかってしまうため、リードタイムの長いサンプリング場所は好ましくないとされています」
判断基準としては他にも、顧客として安心して受け取ってもらえる場所かどうか、配布単価などが挙げられる。が、あとはリーチ人数も重要だ。ターゲットがマッチしても数百から数千を配布しても市場における一定の割合を超えられないことから、結果が出ず、工数ばかり増えていってしまうといったケースは多くある。工数対効果を高めるためは、数万〜数十万にリーチする施策を打つことが必要となってくるのだ。