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MarkeZine Day 2022 Spring

お客様を理解するデータベースを育てる!ファンケル流「データの民主化」で推進するDX

 多くの企業にとってデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進は急務となっている。しかし、すでに膨大な顧客データを抱えている企業にとっては、新たなデータ活用システムを導入するだけでも膨大な作業と業務の変更が必要になる。2021年に経済産業省から「DX認定事業者」と認定されたファンケルも例外ではなかった。2022年3月10日に開催されたMarkeZine Day 2022 Springでは、ファンケルの通販営業本部 営業企画部で部長を務める長谷川 敬晃氏が登壇。アナログな慣習やレガシーシステムからの脱却方法をはじめ、CXを起点とした仕組み作りの秘訣を解説した。

データ蓄積とシステム柔軟性のジレンマ

 無添加化粧品をはじめ、健康食品・サプリメントなどの製造・販売を手掛けるファンケル。1980年の創業以来、堅調にビジネスを成長させ、2021年3月末時点でのグループ連結売上高は1,149億円。売上の50%は通信販売が占める。

 同社は2014年、DXを推進するプロジェクト「FANCL IT Project(以下、FIT)」に着手した。通販事業を核としていた同社は、早期から顧客データ管理やWebの開発に注力していた。しかし、これらを支える基幹システムはカスタマイズ開発されたものであり、ビジネスが拡大するたびに改修を重ねたものだった。その結果、プログラムがつぎはぎだらけとなり、改修の影響を調査するだけで1年近く要する場合もあったという。当時の課題について、長谷川氏は以下のように振り返った。

 「当時の基幹システムは多重に保険をかけるような『ゼロリスク思想で過剰品質』の構造だったため、改修には莫大な時間とコストを要しました。また、システムベンダーによるシステムのブラックボックス化も課題でした。お客様に満足をいただき、企業が成長するためには、顧客ニーズに応じて柔軟に対応できないことは『悪』です。システムが変化の足かせになってはいけません。変えてはいけない企業理念は残しながらも、変化させるべきサービスは柔軟に変える必要がありました」(長谷川氏)

 こうした決断を基に、まずは足かせ的なシステムからの脱却を目的としたFIT1の取り組みを2016年に実施した。さらに2018年のFIT2では、店舗システムを全面的に見直し、店頭タブレットでもPOS(販売時点情報管理)を活用可能に。またWebもすべてのデータをリアルタイムに連携できるように改修した。これにより店舗、コールセンター、Webといったすべてのデータを、どのチャネルでもすぐに利用できるようになった。

株式会社ファンケル 通販営業本部 営業企画部 部長 長谷川 敬晃氏
株式会社ファンケル 通販営業本部 営業企画部 部長 長谷川 敬晃氏

DX推進の結果「顧客目線の改善」がスムーズに

 長谷川氏はFITの功績について、「スピード感のあるサービス・システム開発」「柔軟なシステム開発」「前向き思考の社員醸成と活用促進」「お客様のCSとLTV向上」の4点を挙げ、次のように説明した。

 「以前は数年かかる規模のシステム開発が見込まれたため、敬遠していた会員サービスの刷新に着手し、数ヶ月でシステム改修を完了しました。また柔軟なシステム開発が可能になったことで、外部のECモールのプラットフォームとシステム連携し、ECプラットフォーム側の仕様変更にも柔軟且つ迅速に対応できるようになりました」(長谷川氏)

 さらに、社員のマインドが前向きに変化したことも大きな成果だったという。これまではシステム部門に相談をしても、「システム的に無理」と断られることが多かった。しかし、FITによるシステム刷新で足かせがなくなったことから、システム部門から「新しいことをやらないか」という前向きな提案が増えた。長谷川氏は、「営業部門からは『やりたかったマーケティング施策ができるようになった』との声が挙がり、顧客担当部門からは『お客様のストレス低減につながった』と声が挙がりました」と語る。顧客にとっても、購入履歴の参照や店舗ポイントの迅速な反映などが実現したことから、LTV(Life Time Value)向上にも貢献しているという。

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この記事の著者

鈴木 恭子(スズキ キョウコ)

 東京都出身。週刊誌記者などを経て、2001年IDGジャパンに入社。「Windows Server World」「Computerworld」などの記者・編集を経て2013年にITジャーナリストとして独立。主な専門分野は組込系セキュリティ。現在はIT(Information Technology)と...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2022/04/26 09:00 https://markezine.jp/article/detail/38758

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