アプリで実現する、顧客&メーカーへの提供価値
――セブン-イレブンは、「セブン-イレブンアプリ(以下、アプリ)」を基軸にした、CRM戦略にも注力されてきました。

はい。現在アプリの会員数は約1,600万人(2022年2月末時点)で、DAUは約12.4%となっています。アプリでは、一人ひとりのユーザーに合わせたおすすめの情報をお届けしたり、お得なクーポンを配布したり。また、お客様に“楽しさ”を提供する目的で抽選会を行ったり、セブンカフェを10杯ご購入いただくと1杯無料のクーポンがもらえる「ポイントコレクティブ」という機能もご提供しています。マーケティングの観点では、アプリを通してお客様に商品をトライアルいただく機会を作り、そこから継続購入に繋がるような施策を打つという狙いがあります。
――膨大な量のファーストパーティーデータを保有されているわけですが、これをどのように活用されているのでしょうか?
まず、セブン-イレブン独自の強みとして、これらのデータは「お客様の生活に密着したデータである」という特長があります。たとえば、大手ECサイトのビッグデータからも、ユーザーの趣味嗜好くらいはわかるでしょう。ですが、「このユーザーは毎朝低糖質のパンとプロテイン飲料を買っている。ということは、健康に気を使っているのかもしれない」というように、日々の生活に入り込むまでのレベルには至らないはずです。
一方、我々が提供するアプリでは、前述したような健康意識の高いユーザーにたんぱく質が摂れる新商品などそのユーザーが好みそうな情報をお届けすることができます。すでにこうした施策は行っていて、情報を送る前と後では、明らかに数字(売上)が変わります。今後はこうした施策を加速させていきたいと思っています。
また、もうひとつ、メーカー様と共同の取り組みも進めています。具体的には、メーカー様に協賛いただき、アプリ内で商品の割引/無料引き換えクーポンを配布する、それが当たる抽選会を実施するなどして、メーカー様の商品をお客様へプロモーションする機会と場所を提供しています。
こうした取り組みを通して、メーカー様へ我々がご提供できる最大の価値は、「最終のCV(購買)までデータを取れること」にあります。デジタル媒体への出稿額は年々増えていますが、この最終CVまで見られるデジタル媒体は、まだまだ多くないのが現状です。そんな中、我々の強みは、情報を受けた方が購買したのか、情報を見る前と見た後の行動はどう変化したのかまで見ることができることです。もちろん、性別・年代などの属性データも把握可能です。
個人情報の開示をしないのは当然ながら、将来的には、このようにデータ分析を基にした販促施策のご提案も行っていきたいと考えています。そのためには、アプリの価値を高めていかなければなりません。弊社アプリの現在の会員数1,600万人というのは、主要SNSアプリのユーザー数と比べると、まだまだボリュームが足りません。アプリの会員数を増やす、利用率を伸ばすためにも、ユーザビリティを高めることを第一にしています。