お酒を飲まない4,000万人にアプローチできる商品・マーケティングを
──アサヒビールでは2020年12月よりスマートドリンキング宣言を出されていますが、それはなぜでしょうか。
梶浦:従来のお酒を飲む方に向けた取り組みを変えたかったのが背景の一つです。アサヒビールはビール類をはじめとした酒類を扱う会社ですので、これまではお酒を飲む方がターゲットになっていました。
しかし、我々の調査では、20代から60代の人口約8,000万人のうち、約4,000万人の方がお酒を飲めない、もしくはあえて飲まない人であると推計しています。そのため、この4,000万人の新たな市場を開拓できるチャンスがあると考えました。
また、近年は酒類に対する規制が厳しくなったり、適正な飲酒がされず社会的にお酒が問題視されたりすることも増えてきました。そのため酒類を扱うメーカーとして、責任ある飲酒を啓もうする必要がありました。
これらの経済的並びに社会的背景から、飲む人も飲まない人も分け隔てなくコミュニケーションをとることができるよう宣言したのが、スマートドリンキングです。
2021年は微アルコール・ノンアルコール市場の拡大に注力
──2020年12月に宣言してから、2022年1月のスマドリ社設立まで時間が空いていますが、どのような取り組みをしていたのでしょうか。
梶浦:主に取り組んだのは、微アルコールやノンアルコール商品の開発・マーケティングです。アルコール度数0.5%の“微アルコール”ビールテイスト飲料「アサヒ ビアリー」「アサヒ ビアリー 香るクラフト」、アルコール度数0.5%の“微アルコール”ハイボール「アサヒ ハイボリー」を発売し、微アルコールやノンアルコール商品の市場拡大を目指しました。
また、各酒類のパッケージに純アルコール量のグラム表示を始めました。度数だとどれだけアルコールを摂取しているのかイメージしにくいのを、わかりやすくするためです。
──微アルコールやノンアルコール商品というのは、どうしてもお酒を飲む人が運転や妊娠、その他お酒を飲めないシチュエーションで飲む代替品という印象があります。スマドリのターゲットである飲めない人・飲まない人には受け入れられているのでしょうか。
梶浦:おっしゃる通り、まだお酒の飲用機会のある方から「微アルコール、いいよね」と好評いただけているのが現状です。ビアリーやハイボリーの売上は順調ですが、その内訳を見ると約9割がお酒を普段飲んでいる方の購入となっています。
そのため、お酒を飲めない・飲まない方と飲める方の交わる部分が提供できていない課題が浮き彫りになってきました。その課題を解決するために立ち上げたのが、スマドリ社です。