ブランドセーフティだけではカバーできない領域も
2020年以降、新型コロナによるパンデミックや#BlackLivesMatterなどの人権問題など、従来のブランドセーフティだけではカバーできない領域が増えている。さらに、2022年2月以降、ロシアによるウクライナ侵攻が激化していることで、ネット上では人為的災害、暴力、政治、社会問題に関するコンテンツに加え、フェイクニュースなどの誤情報も増加している。
混沌とした時代の中、広告配信においてはより細かい粒度でのアプローチが求められている。これまでのブロックリストなどによる「守り」だけの戦略に加え、それぞれのブランドが定義した価値観に基づいて、配信面とブランドの適合性を見極めた上で、メディア戦略を最適化する必要がある。ここで、ブランドセーフティに加えて、ブランドスータビリティ(適合性)という概念を提唱したい。
ブランドスータビリティとは?
前述の通り、ブランドセーフティは、ブランドを問わず安全ではない配信面をブロックする取り組みである。一方、ブランドスータビリティの考え方はそれとは少し異なるものだ。
アルコールのカテゴリーでブランドスータビリティを説明する場合、たとえば酒類のメーカーが、アルコールによるネガティブな影響に関するコンテンツが掲載されているサイトに広告を出すことは不適合とみなされるが、「日本料理に合うベストな日本酒」といったコンテンツが掲載されているサイトには、適合すると判断できる。つまりスータビリティはブランドによって異なるものであり、あるブランドには適していても、別のブランドには適していないことがある。冒頭で顧客理解の話をしたが、まさに顧客理解をベースとした、それぞれのブランドが定義するターゲット顧客層に合った精緻なアプローチが必要となる。
ブランドスータビリティの考え方を実務に取り入れる上で重要なのが、精度とリーチのバランスだ。狭く絞りすぎて出稿量が確保できなければ本末転倒になってしまう。 また、ブランドを問わず不適切なサイトのブロックを行うと、必要以上にブロックしすぎてしまうといった事態を招いてしまう。マーケターが伝えたいコンテンツのコンテキストに基づき、必要なプロテクションと望ましいリーチ規模をバランスよく確保するのが、ブランドスータビリティが目指すところだ。
