マーケティングの民主化を加速するノバセルの新サービス
──4月に新たなサービスとして定量調査サービス「ノビシロ」や競合他社のCM分析サービス「ノバセルトレンド」などの発表がありました。これらのサービスで先の3つの課題をどのように解決していくのか教えてください。
田部:先ほどのWho/Whatですが、プロダクトがあっても誰がターゲットなのか、何を伝えていいかわからずに悩むという課題があります。つまり戦略立案できる人材が不足しているわけですね。
戦略を立てるには、一般的には定量調査を行い課題抽出、さらにユーザーインタビューを重ねてインサイトを把握して、なぜこのプロダクトを選んだのかといったインサイトを探っていきます。それを踏まえてCMの世界ではタグラインを制作し、コピーワークやコンセプトワークを進めます。これは1度作ってしまえば、テレビにもWebにも汎用的に使っていくことができますが、その最も重要である「ターゲットは誰で、何を伝えるのか」を一緒に伴走していくのが「ノビシロ」です。

田部:「ノビシロ」の特徴は、最短20分で安価に顧客からの回答が得られるクイックリサーチであることです。大手調査会社が提供しているパネルを使用し、これまで100以上の実績がある当社のノウハウをもとに最低限必要な機能を選んで簡便なネット調査を実現しました。費用も2万円からと安価に実施できます。これにより、戦略のベースとなる「お客様の声を拾い上げる」ということを誰もが簡単にできるようになるわけです。
正直に言ってしまうと、すべての企業がいますぐテレビCMをやるべきだとは思いません。テレビCMをやるべきタイミング、見送るべきタイミングというのはあると思います。いろいろな考え方がありますが、テレビCMを一度流すと、予想以上に不特定多数の認知を取ってしまうので、そこに対してしっかり準備できていなければ、広く知られたところで購買に至る可能性は少なくなります。テレビCMをやるのではなく、戦略を作ってWebマーケティングに注力すべきという判断もあるでしょう。そうした判断のためにも、調査の民主化は必要です。
──「ノバセルトレンド」はいかがでしょう。
田部:これはテレビCMの効果を、自社だけの効果ではなく競合を含めて可視化するサービスになります。その指標として採用したのが「指名検索数」です。テレビCMの効果指標として「指名検索数」を重視する企業は増えています。なぜなら、改正個人情報保護法によって3rd Party Cookieを使った個人を特定した追跡型広告からの脱却が求められている中で、自然と想起され検討対象に入ることや比較されず指名買いされることが重要になってきているからです。
そこで「ノバセルトレンド」では、私たちが持っているテレビCMの分単位のデータと大手検索エンジンのデータを結合させ、テレビCM放映時間前後3分での指名検索増分をテレビCM効果として計測する仕組みを共同開発しました。この分析手法については特許も取得しています。この指名検索数を指標に、競合とスコア比較するだけでなくクリエイティブ別、放映枠別、ブランド比較などもダッシュボード上で確認できます。
これまで提供してきた「ノバセルアナリティクス」では自社の広告効果しかわからなかったのですが、「ノバセルトレンド」によって他社CMの効果までわかるようになったので客観的な投資判断ができるようになるかと思います。このように効果を可視化したり、競合他社と比較したりすることができるようになり、どのクリエイティブを使い、どのテレビCM枠に投資するか、放映量はどれくらいが適切かなど、など様々な面で適切な判断ができるようになります。これが「効果の民主化」ですね。
2022年、運用型テレビCMはより仮説ドリブンなマーケティング手法に
──最後に2022年のテレビマーケティング市場はどのようになっていくのか、お考えをお聞かせください。
田部:運用型テレビCMは、強い仮説に基づく“仮説ドリブンなテレビCM出稿方法”だと考えています。これまでは、比較的安価に「とりあえず1回やってみよう」というイメージが強かったのですが、今後はCM出稿にあたり強い仮説を持ってテスト検証し、勝率を上げて成果につなげていく傾向が強くなると思います。
もちろん、効果を可視化したり検証したりすることは重要ですが、それが自社のことだけではなく、業界全体や競合と比較してどれくらい効果が出たのかという視点や効果を出すために「誰に、何を」伝えていけばいいのかという戦略面など、運用型テレビCMはマーケティングの本質を突き詰めた手法になっていくでしょう。私たちは、マーケティング課題のあらゆる部分に応えられる様々なサービスを用意して、企業のマーケティングを支援していきたいと考えています。