自動車EC参入の障壁は「どこをデジタル化するのか/しないのか」
MZ:自動車のオンライン販売は国内において非常に新しい取り組みですが、立ち上げ当時どのような想いがありましたか。
森:世間的に見ても、自動車ディーラーによるオンライン販売は国内初でしたので、ネットで車が売れるのか、そもそも本当にサービスを立ち上げられるか、という心配はありました。
田中:車のような高額商品をネットで買うのは、結構勇気がいるなあ、と。ディーラーとしても、一消費者としても、両方の目線で不安は感じていましたね。
田中:社内にはデジタルに慣れていないスタッフもおりますので、そういう方に受け入れてもらうのは難しかったです。不安や疑問を解消し、みらい支店を始めた理由などを知ってもらうため、定期的な情報発信や勉強会などは、当時から現在に至るまで続けています。
MZ:支援企業の立場から見て、自動車メーカーやディーラーのオンライン販売があまり広がっていない理由についてお聞かせいただけますか。
佐々木:購入決定から納車までの時間的なギャップの長さとプロセスの複雑さが、理由として考えられると思います。オプションの選択、ローン審査、新車登録など、ディーラー側だけでは完結できない業務も多く、全てをデジタル化した完全なオンライン販売を実現するにはもう少し時間がかかると感じています。このあたりの煩雑さが導入の障壁になっているのではないでしょうか。
とはいえ、現在の自動車業界は、100年に一度の大変革時代であるといわれています。カーシェアリングの需要が伸びる一方で、コロナ禍を経てマイカーの需要も再び高まりつつあります。刻一刻と変化するニーズに応えるため、新たな販売モデルやチャネルの見直しが必要不可欠なのでは、と考えています。
幅広いラインナップには膨大な商品ページが必要。コスト削減のためゼロから内製化
MZ:みらい支店立ち上げから2周年に向け、運用の自走・内製化を推進されてきたと伺いました。アウトソーシングに頼らない体制づくりを目指した理由をお教えください。
森:大きな理由として、コストの削減があります。チームで話し合う中で、あれをしたい、これをしたいとアイディアが出る一方、費用が足かせとなる場面が多々ありました。
たとえば、自動車のカラーとグレードについてです。みらい支店では、お客様の利便性を考慮し、1つの車種に対し、グレードとカラーと支払いコースの組み合わせ毎に商品ページを作成しております。それぞれ総額が異なるため、トータルで考えるとかなりのページ数が必要なため、その分制作コストにも影響が出てきてしまいます。
外注費用の都合で断念するのは避けたいため、弊社でできそうな部分を内製化することで実現できないか、と考えました。
森:また、年によっては商品の仕様変更や金額調整が頻繁に発生します。
ページ修正の度に、細かい要望を外注先に指示するのは煩雑なため、軽微な案件は自分達で対応したい、という理由もありました。
MZ:自走化への具体的な取り組みについてお教えください。
田中:そもそも、ECサイトの運営に関する知識が何もない状態からのスタートです。どこから手を付けていいかわからなかったため、「どんなPCを買えばいいですか」「必要なソフトは何ですか」など、基本的な設備について和田さんに伺うところから始めました。
その後は、HTMLやCSS、illustratorやPhotoshop習得のため、5ヵ月間ほどオンラインスクールを受講しています。
楽天市場の運用については、和田さんが作成してくださったマニュアルで学習しました。
森:実際の管理画面のキャプチャーがふんだんに使われた、教科書のように丁寧でわかりやすい内容です。そのマニュアルを使ってオンラインと対面両方で授業も行っていただきました。録画した授業動画を繰り返し見て勉強しましたね。